笑いのカイブツ

18歳の時、肉体労働をしてたら、先輩が落下してきた。

27歳、童貞、無職、全財産0円。笑いに狂った青年が、世界と正面衝突!〝伝説のハガキ職人〟による、心臓をぶっ叩く青春私小説『笑いのカイブツ』(本日2/16発売)の番外編、第2弾をお届けします。

—ン。

今の音は何の音だ?

巨大なシャボン玉が割れる音。
耳の鼓膜が破れる音。
眼球が破裂する音。

それは人間が、地面とぶつかった時の衝突音だった。

後ろを振り返る。

地べたにうずくまる男が、
カフカの『変身』の巨大な虫みたいに見えた。

18歳の時、肉体労働をしてたら、上で作業してた先輩が、落下してきた。

上を見上げると、真夏の直射日光が、眼球をしびれさせた。

ビルでいうと3階くらいの高さに、足場が組んである。

朝は自分が作業していた持ち場。
落下していたのは、自分だったのかもしれないと思うと、足が震えた。


「ツチヤ、おまえ、アイツの分も働いてくれ」

僕はその日、夕方までのシフトだったが、
病院に運ばれていった先輩の代わりに、
夜まで働くことになった。

帰る時に、足に包帯を巻いた先輩が、バイトの休憩室に現れた。
3階から落下したのに、奇跡的に大事に至らずに、済んだらしい。

金髪で強面なその先輩に、へたに話しかけたらしばかれると思って、
僕はそれまで避けていた。
その先輩から僕に話かけてきた。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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