由里子はどこだ
宇多由里子。堀井健史の腹違いの実妹だ。
俺より2歳年下で、山の手に暮らす正真正銘のお嬢様。ヤマトグループの大株主である宇多家の娘で、金持ちの親族たちの溺愛を受け、何不自由なく育った。
オッサンは、母親の幸せな人生を握りつぶした門田を、激しく憎んでいる。だが妹である由里子のことは、肉親として愛していた。由里子もまた、兄を愛していた。
由里子は権力の座を守ることしか頭にない父親に対して複雑な感情を抱く一方、ヤマトグループの買収戦争で、兄と父が激しく対立するのが辛かった。
由里子は、俺にすべての真相を明かした。買収を止めさせようとした。
兄を裏切ることになっても、兄が復讐から解放されることを願い、俺が操り人形から解放されるのも願った。
俺たちの暴走に歯止めをかけた無垢な彼女に、俺は惹かれた。
由里子とは恋人ではなかった。けれど、いとおしさと憎らしさの両方の入り交じった特別な感情で、激しく抱いた。
忘れられない女だった。
仮釈放後にオッサンのところに来たのも、由里子と再会できる可能性があったからだ。
収監される直前から、彼女とは音信不通だった。面会にも来てくれなかった。
どうしているのか。できれば会って、話したい。
由里子の愛らしい笑顔を、もういちど見たかった。
「消えたって、どういうこと……?」