大学はダムのようなもの?
伊東 ライフネット生命保険のCEOの出口治明氏と対談した折、『日本の未来を考えよう』という本をいただき、それで知ったのですが、日本は、ほかのOECD諸国に対して大学進学率が低いですよね。
藤野 そうですね、50%くらい。
伊東 欧米は80%くらいかな。その差はとても大きく、これから大きな影響が出てくるのではないかと心配です。
藤野 大学進学率というのは結構重要な要素なのです。よくFランキングと呼ばれる大学のことを存在意義がないなどと言っている人がいますよね。でも、Fランキングの大学だって必要なのです。例えば、和歌山県は若者流出率ナンバー1ですが、それがどうしてかと言えば大学がないからなのです。和歌山県には和歌山大と少数の私立くらいしかない。大学進学率は50%、和歌山では大学がないのでそれだけの若者の多くが県外に出るわけです。東京とか大阪、名古屋などに出るわけですけど、卒業後に戻ってくるのは10%くらいしかいない。
伊東 そんなに低いのですね。
藤野 大学とは一種のダムみたいなもので地域内の大学への進学者が多いとその地域に若者が残る可能性が高いわけです。要するに若者を何とかして流出させないということが大事です。
その点で、対照的なのが富山県と新潟県です。富山県は住みやすい町ナンバー1ですけど若者の流出が止まらない。どうしてなのかと言うと、ワクワクしたりドキドキしたりがない。美味しいものがあって、のんびりできるのは確かにいいですが、若い人からするとワクワクドキドキがとても大切なのですね。
一方、新潟の場合、アルビレックスの創業者がワクワクドキドキが大事だということでサッカー場を作って、遊べるところを作った。それだけではなくて、あとに残るものも作ろうということで福祉やコンピューター関連の専門学校をたくさん作ったのです。そうすると、多くの若者がそこに進学して、卒業した子が地域に残るし、遊ぶところもあるので町づくりも出来ることになるわけです。
2025年以降が問題?
伊東 ご著作の『ヤンキーの虎』にも記されていますが、2025年くらいまでには、今までの地域社会というのが崩れ、ヤンキーの虎たちも苦戦を強いられるということですが、その対策を各地域で考えていかないとたいへんなことになりますね。
藤野 2025年まではまだ大丈夫です。まだ、団塊の世代の人がいますからね。2025年以降はそれらの人が人生の退場をし始めます。今まではビジネスの世界からの退場はしていても、そこそこのお金を持っているので消費もするし、社会参加する人もいますからね。でも、2025年以降は後期高齢者になって人生の退場をしていってしまう。そうすると消費が縮小していくわけです。
そのなかで特に不動産の価値はどうなるのかが重要です。不動産の価値が下がりそうなところというと東京です。東京には地方からも人が集まってこない状況になって、出生率も低いですから、2025年以降は人口が激減するでしょうね。東京でも中野とか荻窪などは顕著でしょうね。若者の流入がなくて、シニアの人ばかり、団塊の世代がいっぱいいるわけですからね。若者の町というけれど団塊の世代の人たちが若者だった時の若者の町だったのです。むしろ、池袋などの方が人口流入があるかと思いますね。
歴史から今を学ぶ?
藤野 経済の動きがどうなっているかということと過去の偉人達がどうして来たのかということを同時に見ていくことがこれから求められる姿勢だということがすごく感じられますね。
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