いつでもどこでも笑っている
「愚痴」という言葉を辞書でひいたら、「言っても仕方のないことを言って嘆くこと」(広辞苑)とあり、辞書ってヤツはまったく人の気持ちをわかっちゃいない、と愚痴りたくなった。人生の大半を愚痴をこぼしながら過ごしてきたが、これらのすべてが「言っても仕方のないこと」であり、そうではない「言って仕方のあること」ばかり言っていたとしたら、一体何が好転したというのだろうか。東京の夜景を独り占めするようなタワーマンションに住めたのだろうか。私は夜景を独占したくなんかない。塵も積もれば山となるように、愚痴も積もれば意見になると信じているし、むしろ、自分の言うことは「仕方ある」と自覚し続けている話者なんて、信頼に値しないと思う。
『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』のサブMCなど、この数年であちこち見かけるようになった佐藤栞里は、コラえることなく、いつでもどこでも笑っている。絶対に愚痴らない。関根麻里や小島瑠璃子が技術として培ってきた「その場の最適解を100%の精度で述べる」という技量を持っているわけでもなく、とにかく笑顔で貫き通す。こじるり的技術は、極まると「姑息」と変換されてバッシングの素材として発芽するが、笑顔というのは技術とはされない。当人サイドもその利点を自覚しているようで、自著『ちゃまてばこ』のオビには「いい子そう、性格よさそう——それほんと?」とある。世間からの評定をひとまずそのように記せるのは、それが「姑息」に変換されないことを知っているからではないか。なかなか示せる態度ではない。
笑顔とハードワーク
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