フリート横田
キャバクラ登場前のオトナの社交場【グランド・キャバレー】
2020年の五輪開催を見据えて、東京の街は大きな変貌を遂げつつあります。その危機感から、今ならまだ間に合う、今しか会えない、昭和の古き良き風景を伝えるべくスタートした本連載。
第4回目は、ダンスや歌、バンドの生演奏などのショーを楽しむ空間「グランド・キャバレー」について。ゆったりとしたフロアに、ゴージャスなシャンデリア……。活気のあった時代の面影を、ちょっと覗いてみませんか。
キャバレー。この単語は、昭和の面影を残す夜の街をうろついた取材中、何度耳にしたかしれない。「キャバレーのできる前は」「あとは」と、いろんな文脈のなかではあるが、そのキーワードを使い話をしてくれた飲み屋の人々。各人が考える戦後飲み屋史・盛り場史のなかで、この業態の登場はよほどインパクトのあるものだったようで、登場前後で繁華街の様子は一変したようである。
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キャバレーという言葉自体は戦前にもあったが、当時、女性(女給さん)がお客に酒食(ときに酒色)を供する業態は、主に〈カフェー〉と呼ばれた。前述のように飲み屋街の人々にインパクトをあたえた本稿で言うキャバレー、その隆盛は、戦後になってから。それも東京五輪以後、高度経済成長期頃である。この頃には名物オーナーたちが競うように店舗を増やし続け、いくつかのキャバレー・チェーンが登場。最盛期には全国で1万2000軒もあったという。
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この連載について
フリート横田
ライター兼編集者として、数々の街歩き取材を重ねてきたフリート横田氏。著書『東京ノスタルジック百景』からのcakes連載が好評を博し、満を持して書き下ろしの連載がスタート。2020年の大イベントを控え、急激に変化しつつある東京。まだわず...もっと読む
著者プロフィール
文筆家・路地徘徊家。
昭和54年(1979年)築地生まれ、幼少期は江東区東陽、その後は茨城で育つ。出版社勤務を経て、独立後は編集集団「フリート」を立ち上げ、代表取締役を務める。タウン誌の編集長を経験したほか、現在も街歩き系ムックや雑誌の執筆・編集を多数手がける。戦後~高度経済成長期の街並み・路地・酒場・古老の昔話を求め徘徊。著書に『東京ノスタルジック百景―失われつつある昭和の風景を探しに』世界文化社(2017)がある。
Twitter:@fleetyokota