ここは東京、西新宿。医療器具メーカー・ドブ板メディカルでは、今日も今日とて、
馬路出課長「いや、だからね。河合さんの意見ももっともだと思うけど、僕はねああだこうだでこう思うんだよね」
河合さん「ですが、それは」
馬路出課長と出向者の河合さんが熱いバトルを繰り広げる、クソ長い会議が絶賛進行中でした。
その様子を眺めていた三年目営業の出来内陽太(デキナイヨウタ)は、一番はじっこの席で、
陽太『長いな……』
と虚無の心になっていました。
陽太『なんでそんなに熱くなれるの? というか今、二人が話していること何? 資料の文字のフォントの話? フォントなんてフォントにどうでもいいじゃん?』
そんな事を考えていると、
馬路出課長「おい、出来内」
と課長に名指しをされました。
陽太「は、はひぃ!」
馬路出課長「お前、さっきから聞いてばかりだけど、今話してることについて何か意見はないのか?」
陽太「あ……あの……」
陽太は瞬時に灰色の脳細胞をフル回転させました。
何も言わないと……積極性がないと怒られる。
そうだ! 何も言わないと怒られる……!
とりあえず何か言わねば……!
陽太「な……なんでもいいんじゃないですかね」
あせりながらそう言う陽太は、
馬路出課長「ば、馬鹿野郎―!!!!!!」
と、課長に大目玉を食らってしまったのでした……。
陽太「と、言うことがありまして……」
ふうっと陽太は医務室で深いため息をつきました。
陽太「次は、僕が会議のファシリテーターになることになったんですよ」
ずんずん先生「あら、よかったじゃない。いい経験になるわよ」
と言うのはずんずん先生です。
ずんずん先生は、社会人がかかるという謎の奇病・社会人病を専門とするメンヘラ産業医で、なぜかドブ板メディカルに常駐していました。
陽太「そりゃそうですが……それで、ファシリテーターって何ですか?」
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