第6回】目で見て追う「行動観察」—コンロ開発や店舗集客に威力を発揮する新手法

キーワードは「行動観察」――。主婦の行動を徹底的に「見る」ことで生み出された、住宅設備大手・LIXIL(リクシル)の画期的なガスコンロ「ひろまるコンロ」。利用客の徹底調査から、来客数が前年同期比16%増となった、KDDI(au)の販売店舗「au・NAGOYA」。この二つの事例に関わった、大阪ガス行動観察研究所の松波晴人所長にも話を聞く。

 今年2月、住宅設備大手のLIXIL(リクシル)が画期的なガスコンロの販売を始めた。その名も「ひろまるコンロ」といい、かわいらしいデザインで広々とした使いやすさが特徴である。

 実はこれ、主婦の行動を徹底的に「見る」ことで生まれたもの。単に新機能を積み上げていくような通常の製品開発とは一線を画している。

 リクシルはまず、新製品を開発するに当たりネットアンケートを1万1200人に実施した。さらに調理の頻度や意識から、主婦の属性を分けターゲットを絞り込み、グループインタビューを行った。

 その後、実際に10人の家庭を訪問し、調理行動を観察した。1軒3時間程度、調理の動向から、調理中の家庭の様子までつぶさに観察し、ビデオも回した。

 調理の現場で発見したのは、三つのバーナーの間隔が狭く同時に使えなかったことである。それなのに使っていないやかんがコンロ上にずっとあった。調味料も出しっ放しで、コンロの上で皿への盛り付けも行われていた。家庭では小さな子供の世話などで調理に時間をかけられないという状況もよくわかった。

 調理時間を短縮するためにも3コンロが同時に使え、鍋ややかんも置けるようにできないか。そこで、グリル排気口を従来の4割ほど縮め約34センチメートルにした。これにより、三つのバーナーの間隔を26センチメートル、37センチメートルと業界で最も広くできた。バーナー上とは別に鍋ややかんを二つも置ける、広々としたコンロになった。

 従来のコンロで意外にスペースを取っていたのは、魚焼きグリルの排気口だったが、これはコンロの下にオーブンを設置した場合の排気口も兼ねていたからだった。そのため50センチメートル以上もの幅を占めていたが、オーブン自体がない場合も多く機能を削った。

 今回の新製品のコンセプトは「いつでも家族においしいと言ってもらいたい」という主婦の潜在的なニーズに応えようというもの。リクシル水まわり総合技術研究所の高久由香里氏は「家族がおいしくご飯を食べるにはお母さんが笑顔であることが必要で、必ずしも高機能の製品が求められているわけではない」と話す。「主婦の笑顔」を重視したため、パステルカラーを取り入れ、手入れも楽にし、価格も約20万円と普及帯に合わせた。機能性ばかりを追求した製品とは違うものに仕上がった。

 現場の観察は何も製品開発に役立つだけではなく、店舗の集客アップにもつながる。

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