自分を追い込めば、壁は勝手に破れる

絆という言葉がもてはやされている通り、現代社会は他者との繋がりをことさらに推奨します。一方で「孤独」は忌み嫌うべきものとして遠ざけられています。でも人は孤独から逃れることはできません。いっそのこと孤独を味方につけてみませんか。
大学受験の失敗を機に、以後十五年間、実家で引きこもり生活を送った田中慎弥さん。そのなかで悟った孤独の効用とは。芥川賞作家が語る、自分を取り戻すための人生論。
大反響の書籍『孤独論~逃げよ、生きよ~』を特別掲載いたします。

事前に力を出し尽くせ

 わたしは野球観戦が好きで、といってももっぱらテレビ観戦なのですが、メジャーリーグを観るたびに感心させられることがあります。選手たちはみな巨体を誇りながらも、動きがとても滑らかなのです。

 ネクストバッターズサークルから打席に向かって歩を進め、バッターボックスで足元の土を踏み固めてから、すっとバットをかまえる。その一連の動作には力みというものが感じられない。すぐれた選手であればあるほどそうです。バットを振って塁上を駆けるにしろ、打球をキャッチして送球するにしろ、その流れるような軽快な身ごなしに、わたしはいつも惚れ惚れしてしまいます。

 彼らのそうしたパフォーマンスは入念な準備あってのことで、練習のときに相当自分を追い込んでいるのは想像に難くありません。練習の段階でもがき、力を出し切る。力を絞り出したあとだからこそ、本番で無駄のない動きができるのだと思います。厳しい練習、そして本番。それをひっきりなしに反復している。だから観客を魅了できるのでしょう。

 彼らのようなトップアスリートにかぎった話ではありません。

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「逃げる」は負けではない。自分を取り戻す究極の手立てだ。孤高の芥川賞作家、窮地からの人生論。

この連載について

初回を読む
孤独論~逃げよ、生きよ~

田中慎弥

仕事、学業、人間関係、因習、しがらみなどによって、現代を生きる多くの人は「奴隷」になっている。「奴隷」とは有形無形の外圧によって思考停止に立たされた人のこと。あなたは大丈夫だろうか。自分の人生を失ってはいないだろうか。もし苦しい毎日を...もっと読む

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コメント

moe_sugano あぁ・・・とてもよくわかる。まさに今のわたしにピッタリのことばだ。> 3年以上前 replyretweetfavorite

nishinojunji 「だいたいこんな感じでいいだろう、なんて高を括って書いていると、すぐに行き詰まって、ろくなものにならない。 」 「そうやって無駄な力を使い、 … もがく。  その果てにブレイクスルーがあるわけです。」 https://t.co/8DnKohBKHY なんでもそうだ。 3年以上前 replyretweetfavorite

airnap お勉強。 https://t.co/VkH26x0Svr 3年以上前 replyretweetfavorite