やりたいことをやるには孤独になるしかない

絆という言葉がもてはやされている通り、現代社会は他者との繋がりをことさらに推奨します。一方で「孤独」は忌み嫌うべきものとして遠ざけられています。でも人は孤独から逃れることはできません。いっそのこと孤独を味方につけてみませんか。
大学受験の失敗を機に、以後十五年間、実家で引きこもり生活を送った田中慎弥さん。そのなかで悟った孤独の効用とは。芥川賞作家が語る、自分を取り戻すための人生論。
大反響の書籍『孤独論~逃げよ、生きよ~』を特別掲載いたします。

不安に耐えろ

 さて、思考停止、つまり奴隷状態に陥っているのに気づいたあなたは、そこから逃げ出したあと、自分にとって価値ある「なにか」を足がかりに新たな道を切り拓こうとする。本当にやりたい職業を目指して歩きはじめる。そのとき、あなたは深い孤独の中にいるはずです。

 いまからこんなことをはじめて果たしてうまくいくのだろうか。間に合うのだろうか。もたげる不安に孤独は募る一方でしょう。あなたはあなたのすべてを背負っているのですから。不安とは独りきりで感じるものであり、不安を抱くことそのものが孤独なのです。

 わたしが作家になったのは、要するに自分の食い扶持を自分で得られるようになったのは、三十歳を過ぎてからです。会社勤めの人なら係長くらいになっている年齢でようやく、わたしは実社会に踏み込んだ。しかも、作家なんていうあてにならない職業です。

 もちろん不安でした。孤独に耐えられるかどうか。なんといっても、それまで仕事に就いたことが一度もない自分に、果たして務まるだろうか、と。

 一方で、長い引きこもり状態を経て耐性ができていた面もあるにせよ、さらに続く孤独に耐えられなければ、自分の道はあきらめるほかないとも思っていました。

 孤独を拒んでなしえることなど、なにひとつありません。自分のやりたい道に舵を切れば、必ず孤独に直面します。

 そこは耐えるしかない。そして耐えられるはずです。孤独になるのは当たり前のことなのですから。

独りの時間が思考を強化する

 なにかをなそうとするとき、孤独がついてまわる。それは必要だからついてまわるのです。

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「逃げる」は負けではない。自分を取り戻す究極の手立てだ。孤高の芥川賞作家、窮地からの人生論。

この連載について

初回を読む
孤独論~逃げよ、生きよ~

田中慎弥

仕事、学業、人間関係、因習、しがらみなどによって、現代を生きる多くの人は「奴隷」になっている。「奴隷」とは有形無形の外圧によって思考停止に立たされた人のこと。あなたは大丈夫だろうか。自分の人生を失ってはいないだろうか。もし苦しい毎日を...もっと読む

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コメント

bun_soku 【作家】【創作】孤独論~逃げよ、生きよ~ 田中慎弥 https://t.co/XmprGZwstj 2年以上前 replyretweetfavorite

yuzumeets_an “もたげる不安に孤独は募る一方でしょう。あなたはあなたのすべてを背負っているのですから。不安とは独りきりで感じるものであり、不安を抱くことそのものが孤独” |田中慎弥 孤独論~逃げよ、生きよ〜 https://t.co/7EoCalRkwR 3年以上前 replyretweetfavorite

hyakutaro_k https://t.co/cNG4WOm7ZM 3年以上前 replyretweetfavorite

kaki_chiharu 自分は自分のすべてを背負っている。それは、誰かといても肩代わりしてもらえるものじゃないんだよね。 3年以上前 replyretweetfavorite