ずっとふらふらしていたっていい

仕事、学業、人間関係、因習、しがらみによって、現代を生きる多くの人は「奴隷」になっています。「奴隷」とは有形無形の外圧によって思考停止に立たされた人のこと。あなたは大丈夫ですか?自分の人生を失ってはいませんか?
大学受験の失敗を機に、以後十五年間、実家で引きこもり生活を送った田中慎弥さん。そのなかで悟った孤独の効用とは。芥川賞作家が語る、自分を取り戻すための人生論。
書籍『孤独論~逃げよ、生きよ~』を、発売に先駆け特別先行掲載いたします。

逃げたあとにやるべきこと

 逃げ出したい、逃げ出そう、少しでもそういう発想がよぎる人は、自分の置かれたよからぬ状況をかろうじて自覚しているという点で、救いが見出せます。自分を客観視できる一面が残されているわけですから。

 危険なのは、頭の中が目詰まりして客観性を失った人です。わたしはいまここで仕事をしているのだ、やり遂げなくては、という目先の事実に雁めになって、完全な思考停止に陥った挙句、ほかの選択肢を見失う。夜逃げすらできないし、その発想自体に思い至らない。そうするうち、体力も精神力も奪われてゆく。これがもっとも危険な状態です。

 学校を卒業し、会社に就職するなり派遣勤務に従事するなりして、時間をかけて形成したキャリアです。与えられた環境でどうにかやっていくしかない、食べていくための仕事なんてそういうものだという意見には、確かに反論しがたい強さがあります。

 その強さこそが厄介なのであって、苦しい、理不尽だ、そう思いながら、どうにもならないとあきらめているのだとしたら、完全な奴隷です。

 奴隷は不幸でしかありません。目の前の仕事や雑事を脇において、ちょっとだけ立ち止まってみることは、本当にできないのでしょうか。

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「逃げる」は負けではない。自分を取り戻す究極の手立てだ。孤高の芥川賞作家、窮地からの人生論。

この連載について

初回を読む
孤独論~逃げよ、生きよ~

田中慎弥

仕事、学業、人間関係、因習、しがらみなどによって、現代を生きる多くの人は「奴隷」になっている。「奴隷」とは有形無形の外圧によって思考停止に立たされた人のこと。あなたは大丈夫だろうか。自分の人生を失ってはいないだろうか。もし苦しい毎日を...もっと読む

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コメント

denshion1 引きこもりは、生きるための立派な手段|田中慎弥| 1年以上前 replyretweetfavorite

hazkkoi "現実とかけ離れているからこそ、あなたの素直な志向がそこに表れていたはずです" 1年以上前 replyretweetfavorite

restart20141201 "「なにか」を探すうえで、かつての純粋な思いにすがってみるのは上策なのです。" 1年以上前 replyretweetfavorite

Chuck_euoni 俺の人生は逃げしかなかったし、そうするしかなかった。未だに恥じる気持ちもあるけど、そうしないと乗り越えられなかったんだろうなとこれを読んで思ったわ 1年以上前 replyretweetfavorite