『風街ろまん』が日本のロックの起点になった
歌謡曲や演歌も含めた戦後の大衆音楽全般ではなく、あくまで今の日本のロックやポップス、つまりニューミュージックを経て定着した90年代以降のJ-POPについて考えるならば、その原点は70年代初頭の数年間にあったと言える。
山下達郎や松任谷由実など、今も第一線で活躍する数々のアーティストがこの頃に登場している。
なかでも最重要作とされているのが、はっぴいえんどのセカンドアルバム『風街ろまん』だ。1969年に大瀧詠一、細野晴臣、松本隆、鈴木茂の4人によって結成され、1970年にデビューを果たしたバンドは、翌1971年に本作をリリースし、その評価を決定的なものにした。
「このアルバムは、はっぴいえんどの最高傑作であるばかりでなく、70年代の日本のロックを代表する最重要作品であり、音楽史上に残る名盤です」と佐々木敦は『ニッポンの音楽』の中で同作を評する。同様の評は多い。
作家・川﨑大助が著した『日本のロック名盤ベスト100』(講談社)では『風街ろまん』を1位に選び「およそ日本語でロック音楽を作る者で、本作にて実用化されたアイデアから無縁の者はひとりもいない。自動車で言えばT型フォード、日本のロックはここから始まった」と評している。
音楽評論家・萩原健太は『70年代シティ・ポップ・クロニクル』(Pヴァイン)の中で、70年代初頭の数年間の音楽シーンの動きがその後の日本のポップスの起点になり、中でも『風街ろまん』が時代を先導する大きな役割を果たしたと論じている。