悲しみに襲われると、私は献血へ行く。献血をする側が、献血に多くを望んではいけない。けれど献血は、その血をもって何かを贖わんとする者に、じつに多くのものをもたらしてくれる。
初体験は16歳のときだ。200ミリリットルの採血が可能な年齢になってすぐ、学校帰りに制服で、今はなき渋谷センター街近くの献血ルームへ行った。急いでいたのには理由がある。当時、私は自分の血液型を知らなかった。血液の抜き差しとは無縁の健康優良児として義務教育課程を終え、これからは自分が知りたいと思ったことは自分の力で調べよう、まずは血液型を知るために献血をしよう、と自立の一歩を踏み出したのだ。
どうせAB型だろうと思っていたら、やっぱりAB型RH+だった。水瓶座のAB型。占いの世界では最凶の組み合わせである、らしい。星座や血液型で性格がわかり他人との相性まではかれると思っている特殊な人々(なぜか日本人にものすごく多い)に言うと、必ず「ああ」と納得される。私にとっては相性占いより、万能受血者アピールのほうが大事である。万一の事態に備えて、私の血液型を知っている他人は多ければ多いほどよい。
そして血液型以外にもう一つ、私には献血を急ぐ大きな理由があった。生まれ変わりたかったのである。