一緒に「ゲーム」をせずに、みんなバラバラに生きていくこともできるけど

現在の日本で、批評家として圧倒的な知名度と影響力を持つ、東浩紀さん。自ら会社をおこし、孤高の批評誌『ゲンロン』を刊行しています。その創刊時から続けられてきた共同討議「現代日本の批評」が、『ゲンロン4』にて昨年末に完結しました。1975年から2016年までのありとあらゆる日本の批評を語り尽くすという野心的な試みです。シリーズ完結に合わせ、その手応え、そして現在の日本の言論状況についてお聞きしました。

批評は学問のオリンピックじゃない

— そもそも、この現代日本の批評の歴史をたどる「現代日本の批評」シリーズを行った動機は何だったんでしょう?

東浩紀(以下、東) 日本の批評の歴史は、『批評空間』*の廃刊とともに一度終わったと僕は考えています。それを再起動したいという思いがある。だから、『批評空間』でやっていた「近代日本の批評」という過去の批評史の振り返りと同じことを、その続編として『ゲンロン』でやった。それは『ゲンロン』のアイデンティティにも合ってるなと思ったんです。
*『批評空間』 1991年より太田出版から刊行された批評専門誌。そこを主な舞台として行われた柄谷行人、蓮實重彦、浅田彰、三浦雅士による共同討議「近代日本の批評」シリーズは、明治〜昭和にかけての日本の批評を概観する画期的な企画だった。『批評空間』は、何度かの休刊を挟み、最後は新たに設立された批評空間社が発行元となっていたが、2002年に廃刊。

— 今回のように共同討議形式にしたのは、「近代日本の批評」の形式を受け継いだということでしょうか。

 もちろんです。ただ、重要なのは、共同討議とか座談会っていうもの自体が、日本の批評の中心だということですよね。みんなで何かについてああだこうだ語るのが、日本の批評の基本形なんです。

— 批評=座談会、ということですか? もう少し具体的に伺いたいんですが、そもそも海外と比べた時の日本の批評の特異性は、どういった部分にあるんでしょうか。

 たとえば、英米圏におけるcriticizmっていうのは、言ってしまえば作品のレビューのことですよね。書評家や映画評論家が作品をレビューして、レーティングしていく。しかし、日本の批評って作品のことを書かないものも多いんですよ。どちらかというと、フランスの哲学なんかに近くて、著者の思考が展開されていくものを批評と呼んできた。そして、哲学が大学の中の制度的な学問だったのに対し、日本の批評は出版ジャーナリズムとともに紡がれてきた。そこで生まれたものは、私小説と哲学が混ざったような独特の文章でもあった。

— 主観的な私小説と、理論的な哲学の間、ということですか?

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ゲンロン4 現代日本の批評Ⅲ 上

--- - 東浩紀 - 浅田彰 - 市川真人 - 大澤聡 - 佐々木敦 - さやわか - 津田大介 - 山口二郎
株式会社ゲンロン
2016-12-27

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東浩紀

検索すればあらゆることがわかる時代。日々たくさんの情報に埋もれているけれど、果たして本当に欲しい情報はなんなのか。茫漠たるネットの時代において「かけがえのない生き方」を示した作家・思想家の東浩紀さんの新著『弱いつながり 検索ワードを探...もっと読む

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コメント

akaliuan2  おもったよりいいことかいてた 2年以上前 replyretweetfavorite

shirimoge >話すことがなくても、相手に関心がなくても、とりあえず一緒にゲームをする。そのゲームを維持するために僕は批評をやるし、『ゲンロン』を作っている。人文学と日本社会の復活を期して、ね。 https://t.co/ebGUGBl8q2 いいっすね~ 2年以上前 replyretweetfavorite

wildriverpeace ステキ!対話できない人って本当に多い。相手の言ったことを自分の価値観だけで叩いたり、共感できないという一点で受容できないのも同様。 対話って化学反応だから、そりゃ痛みもあるし、たまには爆発もする。 だけどそれを楽しめないとねえ。https://t.co/xaXODXOXUs 2年以上前 replyretweetfavorite

manaview 「今の若い小説家なんかは討論ができないんです」というのはSF講座やこの間プレイベントを観たひらマンにも繋がってる話だよなあ。 2年以上前 replyretweetfavorite