笑いのカイブツ

おい! どこでセックスしとんねん! アホンダラァア!!」

自分が死ぬべき最高のタイミングを逃した男・ツチヤタカユキさんの、心臓をぶっ叩く青春私小説『笑いのカイブツ』の2月16日の刊行を記念して、笑いのカイブツ、番外編をお届けします。

とても醜くて、
本当にぶざまで、
汚くて、愚かで、あまりにもダサい。

こんな作品はきっと、誰からも愛されないと思っていた。

『笑いのカイブツ』が生まれる少し前。

僕には、すがりつくものが、
お笑いと彼女〈アナタ〉しかなかった。
その二つを失ったら、死のうと思っていた。

最初に、
彼女が去って、
その後すぐに、お笑いをやめた。
そこから、僕は、死んだように生きていた。

それが今から、一年半くらい前。
僕は、やってしまったと、思った。

「あそこやったんや。
オレが死んどくべきやった地点は、あの夜やったんや」

僕は、自分が死ぬべき最高のタイミングを、逃してしまったことを、後悔していた。

その地点は、僕が彼女と別れる少し前のある夜だった。


「どうしたん?」

彼女が、僕のことを見て言った。

「むっちゃ悲しそうな顔してる」

僕は彼女の隣に、ぶっ倒れて言った。

「このまま寝てる間に死にたいわ」

どんなに、どん底で、堕落していても、ずっと愛されていた。
それはまるで、人間丸ごとを、全肯定されたような感覚だった。

「このまま、愛されとる状態のまま、死にたいねん。
27年間生きてきたけど、オレなんかを好きになってくれたん、キミだけやねん」

仕事はほとんど無く、必死ですがりついていたこの愛情さえ、いつか、失うような気がしていた。

だから、このまま、寝ている間に、僕を死なせてくれ。頼む。
そんなことを思いながら、目を閉じた。

すると、彼女は、
「死なさへん。すぐ病院連れて行って、生き返らす」と言った。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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コメント

tomolluvia 予約した。読むの楽しみ♪ 2年以上前 replyretweetfavorite

OsamubinLaden 書籍化おめでとう  2年以上前 replyretweetfavorite

kielov この言葉は響いたなー 「あの地点だった。 あの夜に、僕は、死んでおくべきだった。 それ以来、僕は、こう思って生きるようになった。」 ツチヤタカユキ| 2年以上前 replyretweetfavorite

mameko15 |ツチヤタカユキ| 書籍化良かった。来月楽しみです。 2年以上前 replyretweetfavorite