日常の喜びを知る—「くらしのきほん」【第22回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第2章では、心地いい暮らしを支える活動を始めている人や企業をご紹介していきます。
今回は、松浦弥太郎さんが「くらしのきほん」を立ち上げたときのお話です。

日常の喜びを知る—「くらしのきほん」

 戦後間もなくからつづく伝説的な雑誌「暮しの手帖」の編集長を9年間も務められた松浦弥太郎さんは、2015年にインターネット企業のクックパッドに移籍し、「くらしのきほん」というウェブメディアを立ち上げました。

くらしのきほんTOPページ くらしのきほんTOPページ

 料理や掃除、園芸などの日々の生活の「きほん」が書かれているメディアです。松浦さんは当初、他のウェブのメディアと同じように「衣類」「食事」「住居」といったジャンルに動画や記事を分類し、ジャンルからたどれるような形式を考えていました。しかし「これは自分のやりたいことと違う」と思ったそうです。たとえば自分がぶらりと買い物に出る時に、そこには明白な目的があるわけじゃありません。

その気持ちはときには「今日は暑いからあっさりしたものを食べたいなあ」という漠然とした欲求かもしれないし、あるときには何か心の中に厄介なことを抱えていて、何かを買って気分転換したいだけかもしれない。ぶらっとコンビニに行って、目に入ったあんぱんや炭酸水を買うという行為が、自分にとって癒やしになるということはありますよね。

 そういうふわりとした気分やムードが、実は日常にとっての大切な要素になっている。そこに松浦さんは気づいて、メディアの構成を全面的に見直しました。スタートした「くらしのきほん」には、「今日のわたしは。」という文章のあとに「あいする」「すてきなこと」「むきあう」「自分らしく」「なつかしむ」などという気分が並んでいます。「ありがとう」を開くと、中には「手紙を書くように」という見出しの記事があって、いちごが鍋の中に並んでいる写真があります。これはいったい何? と記事をクリックすると、こんなふうに書かれています。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

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コメント

sasakitoshinao 「お玉でジャムをかき混ぜていると、出来上がったらあの人に届けようとふと思ったり。ジャムを煮るとは、誰かに手紙を書くことと似ているのかもしれません」と松浦弥太郎さん。 3年以上前 replyretweetfavorite

anonimastudio 物語としてつむいでいくことが、暮らしを慈しみ、楽しむことにつながります。 @cakes_news: 4年弱前 replyretweetfavorite