ハレとケ、日常と共感【第20回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中!第2章では、心地いい暮らしを支える活動を始めている人や企業をご紹介していきます。
日常を大切にする潮流は、単なる一時的な流行ではないかもしれません。

ハレとケ、日常と共感

 ハレ(祝祭)とケ(日常)という有名なことばがあります。

 いまはハレよりもケの重要さが高まっている時代といえるでしょう。これは食に限らず、あらゆる場面にその傾向が現れてきています。たとえばファッションの世界ではトレンドを追い、おしゃれで個性的な服を身につけるのよりも、ごく当たり前の服を当たり前に着るのが良いという「ノームコア」ということばが語られています。このノームコアの哲学については、最後の章でふたたび触れることになるでしょう。

 編集者の菅付(すがつけ)雅信さんは、「ソーシャルメディアがファッションの役割を変える」と指摘されています。自己表現がファッションではなく、フェイスブックやツイッターなどのSNSに変わってきているという意味です。昔はおしゃれな服や高いブランドの服を着て、ルイ・ヴィトンのバッグを持っていれば、「この人お金持ちかな」「カッコいい」と思われ、自己表現となり得るということがありました。だから、自己表現の手段として高い服を買っていたということがあると思うのですね。

 でもいまは、SNSがある。着飾っていても、「いつも日常はジャージ着てダラダラしてるじゃん」とばれてしまうわけです。人と会ったときに着飾ってみせるよりは、日常をきちんと構築していた方がその人の評価が高くなる、という現象が起こっていると思います。これは食事でも同じ。デートで高いフレンチに連れて行ったって、「何を気張ってんの? いつもはラーメンばっかり食べているのに」ってバレてしまう。だから気張ってフレンチに行くくらいなら、日常から料理男子をしているほうが、その人がきちんとしているなっていう証明になるのです。

 2012年に東京都現代美術館で「フューチャービューティー」、未来の美と題する展覧会が開かれたことがあります。副題は「日本ファッションの未来性」で、ファッションのいまと昔を考えるという内容だったのですが、ここでも2000年代の特徴として、従来のような革新性ではなく、「日常の行為をもとにした共感世代のデザイン」に変わると指摘されていました。

 日常、共感。このふたつは大切なキーワードです。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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sasakitoshinao 「わたしたちがいま求めているのは、素朴で健全な食事。食事をみんなで味わい、会話を楽しみ、幸せをかみしめる時間。それによって生きている喜びをわかちあい、がんばっていける勇気」 約3年前 replyretweetfavorite