ひとりには大きすぎる客用のベッドのうえで、ユウカは寝ながらずっと携帯をみていた。
携帯にはアキからメッセージが残っている。
「今日は、先に帰って。タクシー代ロッカーの中に置いておくから」
簡単なメッセージの通り、ロッカーの中にはアキからのタクシー代が置いてありそれを受け取って、ユウカはひとりで六甲の家まで帰ってきたのだった。
家には飼い犬のジョンしかいなくて、竜平も仕事で香港に出かけていた。
ベッドの上で横になって同じメッセージを繰り返し見ているユウカ。返事をするのもなんだか癪だから、既読をつけたまま。なんで癪だと思うのかもわからないけど。
「もう!」
ごろごろベッドのうえで転がって、えいっと立ち上がる。いろいろ考え過ぎても仕方ない。あの後、幕田とアキがどこに消えたのか、考えるのも馬鹿らしい。
幕田も幕田だ。
私に会いにお店まで来たのに、結局はアキと一緒に消えた。
(あいつ、たしか既婚者だったよな!)
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