物語の必要性
新鮮な野菜や美味しい食事を前にすると、わたしたちはさまざまなことを語りたくなってくる。
オイシックスの小堀さんは野菜の料理の話をしはじめると、ほんとうに嬉しそうに、もうことばが止まらない! という表情になります。その様子がとても幸せそうで、聞いているわたしのほうまでなんだか幸せな気持ちになっていきます。
「れんこんは、皮ごと食べようと提案してるんです。皮ごと、まんまのステーキにしちゃう。皮を剥かなければれんこん料理ってめんどくさくないので楽なんですよね。そもそも売ってるれんこんの皮が茶色かったり黒かったりするのは、傷んでるからじゃないんですよ。鉄分が含まれてて、その色が出てるだけなんです。逆に白すぎるれんこんは、漂白剤をつかってる可能性があります。だから茶色や黒でも皮ごと食べちゃう方が楽だし、美味しいんですよ〜。栄養価はどんな野菜でも葉とか根、皮にあって、オイシックスが減農薬にしてるのはそこを食べてほしいからなんです」
「普通のもやしって、エチレンガスと水でつくってるのですごくひ弱。でもオイシックスのもやしが高いのは在来の大豆をつかって土で育てていて、だから根っ子も長くて力強くて日持ちもします。リラックスさせる効果があるといわれている栄養成分のギャバも、普通のもやしより豊富に含まれてます。しっかりして硬いから、もやしを肉で巻いた料理だってつくれちゃう。軽く煮て味噌を溶けば、だしいらずの味噌汁ができちゃうんですよ。これがまた美味しいの!」
「うちの子どもの保育園で、他のお母さんに『うちはセロリの葉を食べさせてる』って話すと、みんな驚くの。『えっ、セロリの葉を食べるんですか?』って。セロリ本体さえ苦くて食べない子が多いのに、葉っぱを食べるなんて信じられない、ってね。だけど、うちはゴーヤーだって子どものころから食べさせてるの。『かけっこが早くなる』『腕ずもうが強くなる』と教えながら、スライスして塩でもんで苦味を抜いてチャプチェにしちゃうんです。するっと食べちゃうよ」
チャプチェというのは、春雨や牛肉をごま油で炒めて、あまからく味つけした料理です。たしかにこの料理なら、ゴーヤーとかセロリの葉っぱを混ぜても子どもでも食べられそうですよね。
小堀さんの話を聞いていると、ぐうぐうとお腹がなってきました。わたしも何かつくることにしましょう。今日は、恵比寿のオイシックス店舗で買ってきた塩味のインスタントラーメン。
油揚げ麺をつかっているけれどけっこうコシがあり、スープはあっさりしていて旨い。インスタントラーメンは登山に持っていくぐらいで、日ごろ自宅では食べないのですが、このラーメンはけっこう気に入りました。
ただ具材は何も入っていないので、何かひと工夫がほしいところ。さて、どうしようか。
冷蔵庫に野菜がたくさんあったので、湯麺にしてみます。
◎野菜たっぷり湯麺
用意するのはしゃぶしゃぶ用に売っている豚ばら肉の薄切りと、キャベツやにんじん、もやし、小松菜などお好きな野菜。そしてかたくり粉。野菜は細かく刻みます。豚ばら肉はひとくちサイズに手で裂いて、かたくり粉を少量まぶしておきます。ラーメンの袋に書いてある分量通りにお湯を鍋で沸かします。沸騰したら豚ばら肉を入れて、しばらく煮ます。あくをとりましょうね。あくがなくなったら、野菜を加えてさらに煮ます。もうひとつたっぷりのお湯の鍋を用意して、麺を煮ます。
野菜は茹ですぎないように。豚ばら肉と野菜の鍋にスープを入れて溶かします。麺はお湯を切って、どんぶりに。その上から具とスープをかけて完成。
麺のうえにこんもりと具材を盛り上げると、美味しそうな見た目になります。
透明なスープがあっさりしていながらも豚の脂を吸ってコクがたっぷりに。かたくり粉のおかげで豚はぷるん、とした食感になり、スープも少しとろみが出て、味わい深さがいっそう増しました。
さて、お腹がいい感じに満足したところで、小堀さんの話をもう少し深掘りしてみましょう。彼女はなにを人々の食卓にもたらそうとしているのでしょうか?
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