農家の固い扉をたたく
だとすれば、そこそこに妥当な値段で安心できる野菜をインターネットで購入できるようになれば、多くのお母さんたちにつかわれるようになるんじゃないだろうか?
オイシックスがこう考えたのは当然の結果だったといえるでしょう。
入会金や年会費をとらず、セットだけでなく野菜1品から買える。専門の宅配網や共同宅配ではなく、一般的な宅配便をつかって再配達も可能で受け取りやすい。
もちろん宅配便をつかえば運送料がかかってしまいますが、実際にはお客さんは1品だけを買うのでなく、たいていはいくつかの品物をまとめ買いしてくれるはず。買える商品の選択肢が多ければ、1回あたりの購入点数は増えるはずだから、それで運送料はカバーできる。しかもネット通販なので、従来のように紙のカタログをつくる必要は無いし、注文用紙のマークシートを処理するコストもかからない。カスタマーサポートもそれほど大きくする必要は無い——彼らはそう予測したのです。
とはいえ、最大の問題は農家さんとのおつきあいでした。オイシックスの若者たちは、農家さんとまったく接点がありませんでした。途方に暮れて、とりあえず野菜や果物を扱っている巨大市場として有名な東京の大田市場に出かけてみました。有機野菜を扱っている卸売りを探して、そこに積んである段ボール箱をチェックする。「○○農園」と書いてある名前と電話番号をメモして、いきなり電話してみました。
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