ピンク・フロイドとユーミンがライブを「総合芸術」に変えた
ライブ・エンタテインメントを巡る状況は大きく変わってきている。では、その実情はどうなっているのだろうか?
BUMP OF CHICKENやサカナクションなど多くのロックバンドを手掛け、日本音楽制作者連盟の理事もつとめるヒップランドミュージックコーポレーションの野村達矢に、その背景を聞くことができた。
まず、ライブ市場の拡大という同じ話題の中で括られることの多い「フェス」と「ワンマンライブ」だが、アーティスト側にとっては出演する際の意識は全く違うという。
「たとえるなら、フェスはシングル盤、ワンマンライブはアルバムのようなものですね。映画で言えば予告編のトレイラーと本編くらいの違いがある。
アーティストの意志や主張をひっくるめて作品として構築した表現を見せることは、ワンマンライブでしか成し得ない。フェスは、あくまでステージも、照明やPA(音響)も、主催者側が用意したもので、与えられた時間の中で表現しているという感覚でしかない。もちろん、その中でいかに最大限のものを見せるかという意味においてアーティストは戦っています。
しかし、あくまでアーティストの表現の100%を見せる場所はワンマンライブである。お客さんにそう認識してもらうことは大事だし、それはどのバンドも一緒だと思います」
では、テクノロジーを駆使した大規模なワンマンライブが増えた背景には、どんなものがあるのだろうか。実はアーティストが作品性の高いライブ表現を行うようになったのは最近のことではなく、そのルーツは70年代のピンク・フロイドにある、と野村は言う。