保険は必要最低限でよい
保険には、生命保険、医療保険、損害保険などさまざまなものがありますが、まず覚えていてほしいのは、保険は「必要がなければ入らない」のが一番ということです。
保険はそもそも、自分の力だけでは対応できないリスクに対応するために入るもの。儲けるためではなく、万一のときのリスクをヘッジ(回避)するのが本来の目的です。たとえば、病気になる確率の低い若者や、預金がたくさんある人、夫婦ともに大企業の社員で福利厚生が手厚い人は、生命保険に入る必然性は低くなります。
一般に、日本人はたくさんの保険料を支払っています。1世帯あたりが支払う年間保険料は平均38万5000円(※)。仮に20年この保険料を払い続けると770万円、30年では1155万円にのぼります。この金額は、「住宅」の次くらいに大きな買い物といっていいでしょう。月々の保険料を提示されると「これくらいなら」と思いがちですが、一部、将来満期金などが戻るものがあるにしても、相当な金額の保険料を支払うことになります。つまり、その分、貯蓄や投資(金融・自己投資)に回す金が減るということになります。
※生命保険文化センター平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」(世帯調査)
子どもが産まれたら死亡保障は必要
では、保険がまったく必要ないのかといえばそうではありません。たとえば、結婚して子どもが生まれた人は、考えたほうがいい場合が多いでしょう。稼ぎ頭となる夫(や妻)に万一のことがあったときに、子どもの生活費や教育費をまかないきれなくなるなどの不都合が生じうるからです。
こうした場合に備えて、死亡時に保険金の受けとれる保険に加入するのがいいでしょう(要するに、普通の生命保険です。学資保険、教育保険、などの類ではありません。詳しくは次回解説します)。
逆に言うと、自分が亡くなっても経済的に困る人がいない独身者には、こうした保険は必要ありません。
では、死亡保障が必要な人はどのような保険に、いくらくらいの規模で入るのが良いでしょうか。CMなどで目にする民間の保険で、金額も多めに、と考える人もいらっしゃると思いますが、加入する前にやっておきたいことがあります。下の図を見てください。
保険に限らず、お金を考えるときには「①公的保障」「②企業内保障」「③自分で準備」の3ステップで考えるのが基本です。
保険や老後資金などを考えるときに、つい③に目がいきがちですが、まずは公的な保障、企業内保障をきちんと調べ、足りない分を自分で準備するという視点を持ちましょう(自営業の方は②がないため、会社員の方よりは自分で準備するお金が増えることになります)。
国や勤務先からもらえるお金
死亡保障で①にあたるのが「遺族年金」です。国の年金制度には老後の生活を支えるという以外に、加入者が亡くなったときに遺族の生活を支えるという機能もあわせもっています。まずは遺族年金でもらえる金額を調べましょう。
亡くなった人が国民年金に加入していた自営業であれば「遺族基礎年金」が、厚生年金に加入していた会社員や公務員であれば、「遺族基礎年金」に加えて、「遺族厚生年金」が受けとれます。
遺族基礎年金の金額は「78万100円+子どもの人数に応じて加算される」というふうに決まっています。第1子と第2子にはそれぞれ年間22万4500円がプラスされ、第3子以降は1人につき7万4800円がプラスされます。
たとえば、子どもが1人いる妻の場合、遺族基礎年金は年間100万4600円、子どもが2人いる場合は122万9100円がもらえます(平成28年度の場合)。支給には「18歳までの子どもがいる」「亡くなった人が保険料を加入期間のうち3分の2以上納めていた」などといった要件を満たす必要があります。
遺族厚生年金は支払った保険料に応じてもらえる金額が変わり、夫が老齢厚生年金として受けとるはずだった老齢厚生年金の4分の3相当額が受けとれます。つまり年収が高い人ほどたくさんの金額が受けとれます。
また、多くの人が見落としがちなのが、②企業内保障です。会社によっては死亡退職金や死亡弔慰金、遺児・育英年金といった制度が充実していて、保障が手厚いことがあります(共済会や労働組合などから支給されるケースも)。
たとえば、あるメーカーでは35歳モデル(子ども2人)で合わせて1000万円程度のお金が遺族に支給されます。②の部分が手厚ければ、その分、自分で準備する分(この場合は死亡保険金の金額)を引き下げることができ、当然保険料も下がります。
民間の保険に入る前に調べておきたいこと
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