「描いていいよ」と言われても悩んだエピソード
—— 『さびしすぎてレズ風俗行きましたレポ』同様、『一人交換日記』でも毎回永田さんの赤裸々な日常が描かれています。描くか悩んだエピソードはありますか?
永田カビ(以下、永田) 一般の方に告白されてからのエピソードは、やはり迷いましたね。
©永田カビ/小学館 ヒバナ
—— あれは100パーセント実話なんですか?
永田 はい。ご本人が「描いていいよ」って先に言ってくださったんですけど、今でも、まだ「描いてよかったのかな」と悩んでいる部分があります。
—— 話が公開されたあと、本人の感想は聞いたんですか?
永田 まだですね。単行本は読んでくださっているので、これから聞けるかもしれません。
—— 永田さんはその方が永田さんに好意を持ってくれたことで、「金銭の授受や時間の制限のないデート」を初めて経験しました。彼女とのそうした関係は今も継続されているのでしょうか?
永田 いや、継続していないです。現時点ではうやむやになったまま終わっていますね。今後どうなるとか話し合ったわけではなく……。
—— もともとお知り合いだった方なんですか。
永田 詳しくは伏せますが、親しくなったのはここ最近です。
—— 永田さんは『一人交換日記』でもレズビアン風俗を訪れていますが、その回で「性行為って情報過多だから、みんなステップを踏んでそこに到達するんだな」と描かれていましたよね。そちらの方とはその「ステップ」のほうを一緒に行われたわけですが、いかがでしたか?
永田 経験が足りなさすぎて、ステップが全くうまく踏めなかったですね。相手の方にも「こんなにいきなりデートしていいんですか」と言われたわけで。「ステップ」があるのはわかってるけど、どうやって踏むものなのかまだわかっていないです。
自分のどこに好意を持ってくれたのかわからない
—— お相手は、永田さんのどういうところを気に入ってくれたんでしょうか?
永田 前に聞いたんですけど、そのとき言われたことを覚えてないんですよ。
—— えっ。
永田 自分が「そんなこと言われたの初めてです」と返したのは覚えてるんですけど。褒めてもらったという事実で舞い上がったのかな……。
—— それを言ってもらえて「うれしい」とは思いましたか?
永田 「この人はなんで、そんなによく知らない私に、こんなに好意を持っているんだろう」と不思議でした。
—— その方は、永田さんの『レズ風俗レポ』は読まれていたわけですよね。それで永田さんのことを知ってくれている、結構内面のところまで理解してくれているからだ、とは思わなかったですか?
永田 そうですね……。さっきも言ったように、自分のことを理解してもらいたいと思って描いているわけじゃないので、マンガを読んで「好き」と言われてもピンとこないのかもしれません。エンターテインメントとして消費してもらいたいので。
—— いま、恋愛をしたい気持ちはありますか?
永田 うーん。あるにはあるんですけど、そこまでにどう至るのかがまったくわかっていない……。
—— こういう人がタイプというのはないんですか?
永田 それが固まってないので、何をすればいいのかわからないのかもしれません。
—— ドキドキして一目惚れしたりもしないですか?
永田 しないですね……。
—— ここまでの話を聞いていて思ったんですけど、もしかして永田さんは「愛したり愛されたい」という願望よりも、実は「理解したり理解されたい」という願望のほうが強いということはないでしょうか。
永田 というのは……?
—— 永田さんを好きというわけではないけれど、永田さんの本質をものすごくついてくれる人が現れたら、永田さんは好きになるんじゃないかな?と思ったんですが。
永田 あー、それは、かなり興味は惹かれると思います。
—— 永田さんはマンガを描くなかで、自分自身で自分の願望と向き合うことを続けていますが、もしかしたらそれを手助けしてくれる他人と出会いたいのかなと。
永田 うーん、言われてみればそうなのかもしれません。
—— 恋人に限らず、「こういう人といると居心地がいい」というのはありますか?
永田 いろいろ気にせず、こちらにも気を使わない人がいいですね。こうやって本が出たことについても「ふーん」って淡々と受け止めてくれる人というか。
—— 自分の世界を持っていて、こちらに干渉してこない人?
永田 そうだと思います。お互いのペースを合わせることを要求してこない人。かまったりかまってもらったりしつつも、同じ部屋にいてもそれぞれ違う作業をしている……ような関係が一番心地良いかなっていう気がしますね。
自分が頑張ったことを褒めてあげたい
—— 『一人交換日記』の連載を終えて、新しく気づいたことはありますか。