ライブビジネスが音楽産業の中心になった
前章ではテレビの音楽番組がいかにフェスの潮流を取り入れ進化したかについて書いた。
その背景にあったのは「現場」というキーワードだ。
音楽業界の構造が変わり、「CDよりもライブで稼ぐ時代」というのは今や前提条件となっている。
音楽ソフトの売り上げは低下する一方で、フェスやライブやコンサートの動員数は右肩上がりで増え続けている。音楽に対する興味は決して失われてはいない。人々は熱心にライブの現場に足を運ぶようになっている。実際、音楽ソフト市場の縮小とライブエンタテインメント市場の拡大は対照的な推移を辿っている。
2000年から調査を行ってきたぴあ総研『2016ライブ・エンタテインメント白書』によると、2015年の音楽コンサートの市場は3405億円となり、4年連続で過去最高記録を更新し続けている。音楽フェスの市場規模は222億円、動員数は234万人と、こちらも拡大を続けている。
一方、同じ2000年の音楽ソフトの生産金額は約5398億円だ。それが、15年後の2015年時点では半分以下の約2544億円となっている。
パッケージ売り上げに代わって、ライブが今の音楽産業の中心的な収益へと移行しつつあるのは間違いないだろう。
では、その変化はどのようにして生まれ、ポピュラー音楽のあり方に何をもたらしているのだろうか? この章ではそのことについて掘り下げていきたい。
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