会話劇ならではの見せ方の工夫
—— 『春の呪い』をあらためて読み返してみて、「横顔」の使い方が効果的だなと感じました。横顔を描くのはお好きなんでしょうか?
小西 たしかにうつむいている横顔が多いとは、私も思いました。好き嫌いじゃなくて、私の描ける顔のレパートリーが少ないんです……。
—— そんな! 横顔のうつむき方の角度にバリエーションがあって、それだけでキャラクターの心情が伝わってきます。
小西 会話劇なので、気を抜くとどうしても動きがなくなってしまうんですよね。話している間に歩かせてみたり、しゃがませてみたり、会話シーンが続く中で読み手が退屈しないように気を付けています。
『春の呪い』1巻より
—— 絵を描いていて楽しいのは、どういったときでしょうか?
小西 夏美の髪の毛をなびかせるのは、描いていて楽しかったですね。描くのが難しいといえば難しいんですけど、画面映えがするので。でも、基本的に絵を描くのはあんまり好きじゃないんです。マンガの作業のなかで一番好きなのは、プロット作りなんですよ。
—— では、いちばん苦手な作業は?
小西 ネームです! A5サイズのスパイラルノートに、1ページがそのままマンガの1ページになるように手書きで描いているんですが、毎度ものすごく悩みますね。そもそも私はウェブでマンガを発表していたので、タチキリや横に読んでいくことを前提とした、紙で読むマンガを描いたことがなかったんです。だから何も考えていないと、目線を右上→右下→左上→左下と移動させるコマ割りばかりしてしまいます。
一迅社担当編集(以下、担当) ウェブだと縦読み前提なので、紙で効果的なコマ割りとはちょっと違うものになるんですよね。そのあたりについては、私からコマ割りの変更を提案するなどして、コマ割りについての考え方をすりあわせていきました。