こだま
けんちゃん、男の美学「プ、プリンを、作ってるときに、こ、こっそり泣くのさ」
“夫のちんぽが入らない”衝撃の実話――交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴ったこだまさんの“愛と堕落”の半生。その書籍化を記念して、その外伝がcakesで特別連載です。
子供の頃から憧れていた教職に就くも、精神を病み離職したこだまさん。引きこもりを経て、最終的に辿り着いたのはとある障害者施設の職員でした。そこに入所する少年けんちゃんと心を通わせるうち、彼の独創的な世界観に心を奪われるようになります。そんな、けんちゃんと過ごしたかけがえのない日々を綴ります。
「さ、寒いと、か、悲しくなるんだ」
そう言って、けんちゃんは長いあいだ廊下に座り込んでいた。
「おしりが冷えるよ、部屋に戻ろう」と何度も促したが、けんちゃんの意思は固い。
言葉は不自由だけれど、聴覚や嗅覚、周囲の些細な変化に異常なほど敏感だ。彼には動物的な勘のようなものが備わっている。もしかしたら熊やヤマネが冬眠する理由も「悲しいから」なのかもしれない。
けんちゃんはもうすぐ施設を出て行く。数週間の実習を終え、お菓子工場で働くことが決まったのだ。
「い、一緒に、じ、実習に行った、こ、小林君は、お、お母さんと、は、離れるのが、さ、さみしくって、ご、ご飯の時間に、ま、毎日、な、泣いていたよ」
「けんちゃんは泣かなかったの?」
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“夫のちんぽが入らない”衝撃の実話――交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴ったこだまさんの“愛と堕落”の半生。
この連載について
こだま
“夫のちんぽが入らない”衝撃の実話――交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴ったこだまさんの“愛と堕落”の半生。その書籍化を記念して、その外伝がcakesで特別連載です。
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著者プロフィール
主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。自主制作した同名ブログ本は同人誌即売会・文学フリマで異例の大行列を生む。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。本書『夫のちんぽが入らない』がデビュー作となる。