月明かりの下で踊ろう

「ワイングラスのむこう側」が始まって4回目のクリスマスを迎えます。bar bossa店主・林伸次さんが、今年もカウンターで聞いた素敵なお話を用意してくれました。結婚してから久しぶりにお店に来たお客様。林さんがかけるレコードに興味津々なその方は、結婚のお祝いに義理の父から12枚のレコードをもらったそう。アーティストもジャンルもバラバラなレコードには、どんな願いが込められていたのでしょうか。

お義父さんから貰った12枚のレコード

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

バーには結婚前の交際中の男女がよく来店します。渋谷で映画やライブをみた帰りに軽くbar bossaで飲んでこうかなって男女や、土曜日に渋谷で買い物をして彼の家に向かう前にちょっとbar bossaで飲もうかなって感じの男女です。

そんな彼らはある日、「林さん、今度僕たち結婚するんです」と仰います。バーをやっている人間としては、その瞬間が一番嬉しかったりするものです。どういうわけか、僕も彼らの恋愛劇の脇役になっているような気がして、ハッピーエンドが近づくと「良かった」なんて思います。

その後、そのカップルはしばらくバーには来店しません。でも、数年後のある日、「お久しぶりです。今日は子供を実家に預けてきたんで」なんて感じでひょっこりと来店してくれます。

先日久しぶりに来店された藤原さんもそんな一人でした。彼は僕がレコードを裏返すのを見ながら「林さん、レコード好きなんですね」と声をかけてきました。

「ええまあ。僕の唯一の趣味なんです。藤原さん、レコードに興味があるんですか?」

「いえ。僕ではなくて、彼女のお父さんがすごいコレクターなんです。彼女の家にはお父さん専用のオーディオ部屋があって、壁一面に1万枚くらいのレコードが並んでるんです」

「1万枚ってすごいですね。奥様の実家にはよく行かれるんですか?」

「ええ。結婚前には2ヶ月に一回、彼女の家にお食事を誘われたんです。彼女の家族はみんな料理をするのが大好きで、お父さんとお母さんと彼女と彼女の妹が4人でわいわい言いながら、夕食の用意をしていました。
 料理は毎回、季節を感じるものというテーマが決まっていて、夏には夏野菜をたっぷりつかったもの、冬にはジビエにこだわって、とにかく本格的だったんです。
 食事の時はとにかくみんなたくさん飲みました。ビールから始まって白ワイン赤ワイン、お父さんもお母さんも彼女も彼女の妹もとにかくみんな飲んで、たくさんの話を僕たちは楽しみました」

「楽しそうですね」

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

0430_taku 素敵やないか 3ヶ月前 replyretweetfavorite

sadaaki 人気連載の最新話もクリスマスの話。バーのお客さんが語る、奥様とそのお父さんとの物語。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

kawauchi_co 『結婚すると喧嘩することもあるし、イヤなこともあると思う。でも、満月の夜にはレコードをかけて「月の曲」を聴くと決めたら、幸せな家庭が出きるかなと勝手に思って。まあ嫁の父の最初で最後のわがままと思って聞いてください』 https://t.co/cMx9YfR6nC 3ヶ月前 replyretweetfavorite

iammeiden ちょっとこのお話に感動してしまったyo。 お義父さんから貰った12枚のレコードと満月の夜のお話。期間限定無料閲覧の記事。 3ヶ月前 replyretweetfavorite