相手も喜んでくれた会心の取材
印象深い出禁事件がもう一つある。それは、私が後にテレビブロスの編集者として、企画を主導することになる時にも発生した。「探偵特集」を作ったのだが、この時にとある推理小説シリーズのファンクラブの人々を取材した。
同クラブの会長と密な連絡を取り、彼らの会合が終了した後に、会員を集めて座談会を開催する、ということが決定した。当日、待ち合わせ場所に行くと、人の良さそうな初老の男性が「どうもどうも! この度は取材いただきましてありがとうございます!」と満面の笑顔で握手をしてくれた。
会員は30代中盤から60代くらいの人が多く、いずれもその推理小説が大好きで、舞台となった場所へ皆で頻繁に行き、交流を深めているのだという。会長は会員に対し、「今回、私たちを取材していただくテレビブロスの中川さんです!」と紹介したら、なぜか拍手をもらえた。
そして、近くの喫茶店で座談会開始。なんと、15人もの人が来てくれたのである。座談会は笑いあり、真剣な場面ありで、面白いネタが続々ともらえた。そんな中、同小説のテレビドラマ版について若干の議論が生まれた。
俳優の田中(仮名)と山田(仮名)と吉田(仮名)がその探偵の役をしたのだが、どうやらその場では田中の評判はとてもよく、山田はまぁまぁ。吉田はイメージに合わないとして満場一致でダメ出しをくらったのである。その時の会話はこんな感じだ。