安定の裏返し、「反逆クール」【第6回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート!全原稿を火・木の週2回で公開します。ミニマリズム、シェア、健康食志向・・・今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか。
第6回のキーワードは「反逆クール」。こうした立ち位置にはどのような問題があるのでしょうか。

安定の裏返し、「反逆クール」

 そうした陰謀論さえ生じてしまうエリート意識。これこそがカウンターカルチャーに潜んでいる落とし穴だといえるでしょう。「反逆こそクールである」という感覚。こういう立ち位置を本書では仮に「反逆クール」と呼ぶことにします。反逆し、アウトサイダーに出ることがカッコいいのだというこの反逆クールのエリート的感覚は、1980年代ぐらいまではわたしたちの日本社会にも色濃くありました。

 思い起こせば、わたしが新聞記者をこころざしたのも、会社員ではありながらジャーナリストでもあるというその職業に、反逆者的なカッコよさを求めたからにほかなりません。普通の会社員が朝きちんと起きて通勤し、夜は帰宅するという決まり切った生活をしていたのに対し、明け方まで飲んで暴れ、昼ぐらいに出社し、やさぐれたファッションも許されるというマスコミ稼業は、まさしくアウトサイダー的な反逆クールに満ちあふれていたのです。

 この反逆クールは、「明日はいまより良くなる」という希望の安定さと表裏一体の関係にありました。明日への希望が安定していたからこそ、明日の希望を否定したくなる。「明日も明後日もその次の日も、未来までずっと毎日終身雇用の会社員でいられる(=いなければならない)からこそ、会社員という身分に反逆したくなる」という逆説的なマインドだったのです。

 だから反逆クールをきどる一方で、当時のわたしたちは上昇志向も同時に持って

いた。

 ごく個人的な記憶ですが、リーマンショックの少し前に、知人の女性経営者と話していて「期待値」の話題になったことがあります。バブル世代の彼女はこう言ったのです。

「わたしたちはエクスペクテイション(期待値)で消費してるよねえ。佐々木さんもそうでしょう?」

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

consaba 「わたしたちはエクスペクテイション(期待値)で消費してるよねえ。佐々木さんもそうでしょう?」 4ヶ月前 replyretweetfavorite

syuhei こういう逆説的なマインドはある種の「甘え」なのかも。>未来までずっと毎日終身雇用の会社員でいられる(=いなければならない)からこそ、会社員という身分に反逆したくなる 4ヶ月前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao 「明日への希望が安定していたからこそ、希望を否定したくなる。『未来までずっと終身雇用の会社員』だからこそ、会社員という身分に反逆したくなる」逆説的なマインドだった。 4ヶ月前 replyretweetfavorite

ideanomad これ全文掲載するんだ〜。cakes太っ腹だな。(^_^) → 4ヶ月前 replyretweetfavorite