「俳優がみんなストイックだと思ったら大間違い!」
「火事だ!」くらいの声の大きさで「やましげだ!」と叫ぶ声が聞こえる。急いで仕事部屋を出て、リビングに駆け込む。山崎樹範(以下、やましげ)のことがとにかく好きな妻と一緒に暮らしているうちに、我が家ではやましげの存在が特別視されるようになった。かといって出演情報を隈なくチェックしているわけではない。「やましげとは唐突に出会うべきであり、レア感を堪能するのが正しい接し方」との定義を共有している。
朝ドラを見終わった後にそのまま『あさイチ』を眺めていると、時折やましげがゲストで登場することがあり、そういう日はやましげを堪能するために仕事の始業を遅らせる。コアな視聴者の中にも同様にやましげを堪能しようという動きがあり、特集テーマに準じたメール・FAXを募るコーナーでも、やましげ個人に宛てた突っ込みのメッセージを送ってくることが少なくない。そういう状況に応対するやましげの切り返しは漏れなく面白い。いつだったか、荒ぶるように吐いた「俳優がみんなストイックだと思ったら大間違い!」は、彼らしさの詰まった至言だった。
「山崎さんが来るとピリッとするよね、と言われたい」
毎月、雑誌『ダ・ヴィンチ』を開いて真っ先に読むのは、星野源のコラムでもオードリー若林のコラムでもなく、やましげのコラム「やましげのミカタ」である。連載に毎月記されているスローガン「気になることは山ほどあるよ。でも大きな声では言えないよ。だって、やましげなんだもん。」を具象化していくコラムが読ませる。2015年1月号では「やましげあるある」として、「『あのドラマ観てました!』と言われたドラマに出ていない」「『そのドラマに俺出てたよ』と言っても『出てたっけ?』と言われる」を挙げた。本人としては不服のようだが「浪人生っぽい」との周囲の声も的確だ。時折、予備校に流れ込んでいく少々老け込んだ学生を見かけると、そこはかとないやましげ感が漂っている。