理不尽な要求ほど強気に頼む

夜の街で働き始めた百鳥ユウカさん(34)。思わぬことから、夜の蝶たちの大変さを自ら知ることに。もはや、婚活からこんなに離れて百鳥ユウカさんはどこへ向かおうとしているのか? 本人さえも知らない婚活の向こう側に、フルスロットルで駆け抜けます。

ユウカはアキに自分の地を認められたみたいで、むしろ気持ちよかった。ちゃんと自分のことを理解しても態度を変えないところに、アキの優しさがあった。

「そろそろ、もっと自分の地を出してもいいんじゃない? その方がみんな楽よ」

アキはそう言ってくれたが、ユウカは「まぁ」と愛想笑いを返すしかなかった。自分が思うように生きると、悪いことばかりが起きる。これがユウカが大人しく過ごしている偽らざる理由だった。

ある日、アキと一緒に家に帰ってくると、リヴィングのソファに竜平さんが座っていた。

「あら、帰って来てたのダーリン!! 連絡してくれればよかったのに」
「ははは、驚かそうと思ってね。これはお土産だよ」

竜平さんはアキと40歳も離れた夫だ。仕事で海外によく行っていて一ヶ月ぶりにシンガポールから帰ってきたところらしい。アキはソファに座っている竜平にしなだれかかって、ユウカの目も気にせずにイチャイチャし始める。

「ね、今夜いいでしょ。それとも疲れてる?」

「はっはは。そんなことないさ。私も急いで帰ってきたよ。君のいない寝床は寂しいものだったからね」

「私も。竜平さんが帰ってくるのを本当に待っていたんだから」

竜平もアキも、今すぐにでもリヴィングでセックスを始めそうな勢いだ。ユウカは目も耳もやり場に困る。

この間、このリヴィングであったことを考えると複雑な思いだが、2人ともそれをわかってやってるんだから、この夫婦って不思議だ。知ってて受け入れてる竜平さんは確かにすごいと思う。

「そうだ、ユウカさん。婚活の方はどうだい? 幕田くんとはうまくやってるかね」

突然、竜平から話を振られてユウカは肩にかけていたバックを落としそうになった。

「あ、……はい」

「もう、そんなことはどうでもいいでしょ。ユウカは、私の手伝いをしてくれてるんだから」

アキが横から口を挟んだが、竜平は真面目な顔して返答した。

「そうはいかないさ。ユウカさんにも幸せになってもらいたいからな」

「あ、あの私のことは気になさらず。婚活のことはおいおい……。今日はお二人でごゆっくり」

リヴィングをさっと抜けて、ユウカはその場を逃げた。

婚活のことは忘れたわけではなかったけれど、結婚請負人と名乗る幕田にあれから連絡するのも嫌だったし、アキに頼まれた仕事は大変だけど、自分の力を活かせる感じがして、ついつい婚活の方は億劫になっていたのだ。

……とはいえ、婚活のことはずっと心に引っかかっている。

以前は、早く運命の相手に出会いたいと思ってたけど、最近は日常生活を送るのが精一杯で恋愛はいいかな、と思っているのも正直なところだ。

部屋で一人になっても、今は同じ屋根の下にアキさんたちもいるから、寂しくない。今日からは竜平さんも帰ってきたからしばらくは賑やかになるかな。

「でも、たぶん今夜はリヴィングに降りられない(笑)」

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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kthkr0214 |菅沙絵|結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜 ユウカさん、可愛い可愛い可愛い。なんだか涙が出そう。出ないけど。ユウカさん、よくやった! https://t.co/rgEyJdk47q 4年弱前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 菅沙絵@sae20160325 https://t.co/qIcaBiy6OH 媚びない、照れない、自然体 媚びない、照れない、本気出す 3番テーブルの島田さん これくらいの嘘はついても罪はない、と思える https://t.co/1Y49J6qmJj 4年弱前 replyretweetfavorite