昭和のエンターテイメントから学ぶこと(虎姫一座 なお インタビュー)

さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は浅草発のパフォーマンスユニット、虎姫一座のキャプテン、なおさんの登場です。

東京・浅草の劇場を拠点にダンス、歌、踊りなどをミックスさせたパフォーマンスで活動を続ける虎姫一座。古きよき昭和歌謡のリバイバルをコンセプトに作られた演目は、映像を使った演出も加わり、1940~80年代へタイムスリップしたかのような気分にさせてくれる。ただ、キャプテンの「なお」を筆頭にメンバーはリアルタイムで当時の流行に接してきたわけではない。

彼女いわく「昭和の本って図書館に行くと結構あるんです。それを皆で教えあったりして」というように、本の存在が彼女たちのイメージを膨らませるのに役立っているというわけだ。今回はそういった本も含めて、なおが個人的にセレクトした選書を紹介する。

当時のニュアンスを言葉で説明するのは難しい。そんな時に本が役立ちます

— まずは『シャボン玉ホリデー スターダストをもう一度』からお願いします。

なお 8月の虎姫一座の演目だった『シャボン玉だよ!牛乳石鹸』の資料本です。当時の関係者の方が書かれていて、写真や台本が載ってます。『シャボン玉ホリデー』は昭和の伝説的な歌番組ですけど、600回近く放送されたのに資料がほとんど残ってなくて、映像も4~5本くらいしか目にすることができない。そんな偉大な番組を舞台にするわけですから、資料集めは必死でやりました。

そのなかで何とか手に入れた資料の一つが、この本です。ザ・ピーナッツさんとかハナ肇とクレージーキャッツさんとかの関連本はあるんですが、この本には番組の台本がそのまま載っているんです。実際の番組を観ることはできないけど、台本を読むことで「こういうギャグをやっていたんだ」という新たな発見があります。それに写真も豊富に掲載されていますし、資料性という意味でもこの本が一番ですね。

— 舞台で演じる上で参考になることも多いですか?

なお 私は『シャボン玉だよ!牛乳石鹸』の演目でザ・ピーナッツさんの役をやらせてもらうので、ファッションの研究はもちろんですけど、歌っている時の雰囲気とか、そういうのはすごく研究しますね。クレージーキャッツさんを思わせるようなコントみたいな寸劇も入るので、当時の笑いのニュアンスを感じるのにも役立ってます。現代のものとは絶対に違うニュアンスなんですよ。「これです」って説明するのがほんとに難しいので、こういう本をいっぱい読んでその時代の空気を感じるしかないんですよね。

— 続いては『なんだっけ?歌詞ことば』です。

なお 昭和歌謡に出てくる歌詞のフレーズを辞典形式にまとめた本です。例えば〈暮れなずむ町の〉という歌詞だったら、「暮れなずむ」を調べると意味がわかる。“「なずむ」は、物事がすんなり進まない状態。暮れなずむは日が暮れそうでなかなか暮れないこと”って。個人的に驚いた歌詞は「銀座カンカン娘」という虎姫一座でも歌わせてもらっている曲に出てくる〈ままよ銀座は私のジャングル〉でした。私は「あれ? お母さんに向けて歌ってるんだ」と思って、「ママ」の意味だと勘違いしてたら、実は「まま」って日本語で“施す術がなく成り行きに任せるという意味で、どうにでもなれ”という意味で。そういったフレーズが昭和歌謡という切り口で全部まとめられてるんです。

ほかにも「メリケン波止場」って昭和歌謡の頻出ワードなんですけど、「アメリカン」を「メリケン」って言ってた時代があって、外来語がまだ不安定だった頃だから今と違う言い方なんですよね。「キッス」みたいに「ッ」が必ず入るとか、当時ならではの表現っていうのは、こういう辞書じゃないとわからなかったりするので。

— 3冊目は『世界一の美女になるダイエット』です。

なお 恥ずかしいタイトルの本ですみません(笑)。読み過ぎてボロボロになってますが、虎姫一座を始めたばかりの頃は今より6~7キロ太ってたんですよ。エノケンさんの曲で〈背は低いが肉体美、おまけに足までが太い〉っていうフレーズがあって、その頃は「なおが適役だね!」って言われて「演出のために太くしてるんです~」って冗談を言い合ったりして、私はそういうふうにイジられるキャラクターだったんです。でも、もっといろんな役をやりたいと思って、そのためにはダイエットが必要だなと。その時にメンバーにもらった本なんです。意識がだいぶ変わりましたね。この本を読んでからは「これは身体に悪いから食べたくないな」とか、「これは美容にいいから食べてみよう」とか、無理のない食生活ができるようになりました。レクチャーしてくれる語り口調が「~と思ったわ、あなたは~なのね」みたいな感じなので、読んでいて女子的意識も上がる気がするんです。

— 無事にダイエットも成功したと。

なお はい。すぐに太っちゃうような食べ物が好きだったので、ちょっと食べるものを変えるだけで身体がだいぶ軽くなって、それ以外にも運動したりしたおかげで一気に痩せましたね。こんなに違うのかって思いました。毎日ステージがあるので、すごく実感がありました。

— 次は『バガボンド』です。

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本棚は人を表す、といいます。本連載は、さまざまなプロフェッショナルの考え方・つくられ方を、その人のもつ本棚、読書遍歴、本に対する考え方などからひも解いていこうという試み。本がいまの自分をつくったという人から、ほとんど本を読まない人の本...もっと読む

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i_mecha 全国のすぎやマニアさん向け記事 【新着】 3年弱前 replyretweetfavorite