「舌の感覚」を切り替える
明子さん一家の住んでいる地域は、東京でも比較的豊かな街として知られていますが、現実には多くの母親ははたらいており、共働き家族がほとんどです。
「だいたい7割ぐらいのお母さんがはたらいてる感じだと思います。はたらいていない場合も、下の子が小さくて育児休業中だったりすることが多いかな。完全に専業主婦の方は、たぶん1割ぐらい」
おまけに小学生の子どもを持っていると、PTAや習い事関係の用事も入ってきます。明子さんもPTAの役員を務めていて、毎月、会計の仕事に苦労しています。
明子さんが結婚したのは、18歳のころでした。九州の地元で知り合った家入さんと結婚し、起業して会社をおこした夫と一緒に東京にやってきました。
結婚してから夫のために料理をするようになったのですが、そのころは親子丼ぐらいしかつくれませんでした。東京に出てきて、幕内秀夫さんの『粗食のすすめ』(新潮社)という本を偶然に手に取る機会があり、感銘を受けます。
幕内さんは、伝統的な和食を中心に家庭料理をつくっていこうと提唱されている食の評論家で、『粗食のすすめ』は社会的に大きな注目を集めた本です。家庭料理のカウンセリングもされていて、実はわたしも10年近く前に幕内さんのカウンセリングを受けたことがあります。家でどのようなものをつくり、食べれば良いのか? という個人的な疑問に対して、幕内さんのこのようなことばがいまもとても印象に残っています。