文化会館の控え室。
十畳くらいの和室は、合唱部員総勢二十三名が入ればもう満員だ。部屋の片面には鏡と化粧台があって、きっと演劇とかの催し物をするときに使うのだろう。
「みんな揃ったな」
と前置きしてハル先輩が言った。
「じゃあこれからの予定だけど、一時に音楽祭が開演して、俺らの出番は二時半から。十五分前に舞台袖に入らなきゃいけないから、二時には必ずこの控え室に集合すること」
は~い、と合唱部員。
副部長の瑠華先輩が前に進み出て、
「ホールの客席にいてもいいけど、自信喪失するかもしれないからやめといたほうが無難よ。自分より先に演じる人は誰もが名優って言うでしょ」
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