ここは東京、西新宿。
医療器具メーカー・ドブ板メディカル株式会社のマーケティング部に、泥沼倫子(ドロヌマ・リンコ)という、今年32歳になる、ちょっと色気のある女性がおりました。
緩井(ユルイ)課長「泥沼さん、このあとちょっと打ち合わせいいかな」
泥沼さん「あ、はい。わかりました」
とクールに返す泥沼さんですが、実はこの泥沼さん……マーケティング部の口元のゆるい感じの緩井課長(42歳)と
絶賛泥沼社内不倫中
だったのです。
こんな関係になって半年……。 今のところ誰にも気づかれずに関係を続けてきました。 しかし、泥沼さんも32歳、結婚のことを考えると、いつまでもこんなことを続けている場合ではありません。
だがしかし、だがしかし
″妻とは別れるから″
そう言ってくれる彼の背中から離れることができません。 今日も打ち合わせという名の「外での密会」を終え、 緩井課長と時間をずらしてラブホから出る泥沼さんの姿がありました。
ラブホ街を一人歩きながら泥沼さんは、深いため息をつきました。
こんな関係はやめなきゃいけない……。 でも彼は奥さんと別れるって言ってくれてるし……。 こんな関係になったおかげで、課長は仕事でも色々融通きかしてくれるし、 こないだなんて企画が採用されて社長賞取っちゃうし……。
ぶっちゃけ、この関係が不倫であるということ以外は、 泥沼さんにとってはおいしいところばかりで、 この関係をやめる理由は1ミリもありませんでした。
泥沼さん「でも、会社で枕営業してるってばれたら死ねる……」
そう泥沼さんが深いため息をついたその時でした。
???「そこのお嬢さん」
と、路上の占い師に声をかけられました。
占い師「お悩み事があるようですね。その悩みはずばり『男』」
と小鹿のような目をしたその女性占い師は、台の上に置いてある水晶玉を眺めながらそう言いました。
占い師「しかもだたならぬ関係ですね……これは……不倫、不倫の香りがしますね」
泥沼さん「!?!?」
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。