品質」以上に大切になるのは「愛着」。鎌田安里紗【後編】

ギャルモデルでありながら、慶應義塾大学大学院に在籍し、現在はエシカルファッションプランナーとして活躍する鎌田安里紗さん。前回、「エシカルファッション」は気持ちや態度を表す言葉であり、自分の消費行動の影響に注意を払いながら、自分が持ちたいものを選ぶことが大切であるというお話を伺いました。
「エシカルファッション」は、これからのラグジュアリーなファッションを考える上で、重要なキーワードだと語る鎌田さんに、その真意を聞きます。

もはや単に「高いもの=ラグジュアリー」とは言えない時代

—前回、「エシカル」はこれからの「ラグジュアリー(贅沢)」を考える上で重要なキーワードになるとおっしゃっていましたが、それはどういうことなのでしょうか。

鎌田安里紗(以下、鎌田) 先日、ファッションとテクノロジーの未来について語り合う、「Decoded Fashion Tokyo Summit 2016」というイベントがあって、そこでデザイナーのハヤカワ五味ちゃんと、Vogue Japan編集長の渡辺三津子さんと「これからのラグジュアリーを考える」というテーマで鼎談をさせていただいたんです。

そこで出てきたのが、「これからは単に高いものがラグジュアリーだとは言えなくなるだろう」ということ。物事の透明化が進むから、工場が同じでも、ブランドによって販売価格が異なることが可視化されると、値段の差はクオリティの差ではないとわかってしまう時代が来ると思います。

—クオリティが変わらないとわかってしまったら、代わりにどこで差がつけられるのでしょう?

鎌田 「どれくらい語れるのか」ということだと思います。デザインが生まれた経緯やその素材を選んだ理由、どこでどんな人によって作られているのかという生産背景を、デザイナーから販売員まで、ブランドに関わるすべての人が語れる方が、絶対にお客さんの心をつかめると思うんです。
その「背景を意識する生産のあり方」は、エシカルファッションが目指すものと近いと感じています。

—ただ、現状では、手に取った洋服の生産国はわかっても、どの工場で作っているかまでは、わかりませんよね。

鎌田 そうなんです。先日、デパートで色や形がいいなと思うセーターを見つけて、タグに「Made in Japan」と書いてあったから、店員さんに「何県の工場で作っているんですか?」と聞いてみたんです。でも、店員さんにとても怪訝な顔をされてしまって。
私もふと気になって聞いてしまっただけですし、答えてくれる期待があったわけでもないのですが、なんとなく買う気がなくなってしまいました。
もしそこで、店員さんが「○○県の△△工場で作っています。そこは××の技術が得意なのでお願いしているんですよ」などと教えてくれたら、そのセーターが3万円しても買ったと思います。

今はまだ、洋服のトレーサビリティ(追跡可能性)は進んでいないのが現状ですが、背景や理由を語れるということは、力強い魅力になると思うのです。

—食品に関しては、トレーサビリティは少しずつ進んでいますよね。

鎌田 そうなんです。トレーサビリティがあることで、その食品の価値が高まると思うんですよね。

先日、農家さんの見学に行って、そこで米や醤油、納豆を買ったんです。それを家で食べたら「ああ、これはあの人が作ったお米だなあ。醤油も納豆もあの人が作った大豆からできたんだなあ」と、その農家さんから聞いた生産過程の話を思い出して、とても幸せな気持ちになったんです。

実はその直前に、きらびやかなシャンデリアの下でシャンパンがサーブされる、ザ・ラグジュアリーと言えるようなカクテルパーティーに出席していたのですが、出どころや作り手の顔の分かるご飯と納豆の方がよっぽど幸福度が高くて贅沢だと感じました。

同じように洋服も「この服は5万円だから良いものだ」とか「3000円で安かったから買った」という場合と、「このブランドはこういう哲学を持っていて、この素材はこういうところからきていて…」と自分が認識して着ている場合では、幸福度に大きな差があるのではないかなと思うんです。

エシカルファッションブランドは、生産背景を消費者にちゃんと知らせてくれます。だから、単に自分の幸福度を上げるためとして、エシカルファッションを取り入れてもいいと思うくらいです。

生産に関わる全ての人を把握した、ラグジュアリーなジーンズを作りたい

—今度、鎌田さんが企画に携わったジーンズが販売になるそうですね。どんなジーンズなのですか?

鎌田 生産に関わる人々を把握した、トレーサビリティの高いジーンズです。もともと生産背景がクリアな洋服を作りたいと思っていたところに、「エブリデニム」というブランドと出会ったため、コラボジーンズを作ることになりました。生産は、糸を紡ぐところから最終加工をするところまで、すべて岡山の児島で行います。

岡山の児島は国産ジーンズ発祥の地で、世界のハイブランドのジーンズを受注生産するほど高い技術を持った工場がたくさんあります。ただ、ファッション産業が価格競争や大量生産に走ることで作り手がおろそかにされてしまったため、国内の工場さんは今、苦境に立たされています。

それに疑問を持って、「顔が見えるジーンズを」と工場の方と一緒になってジーンズ作りをしているのが、「エブリデニム」の山脇さん、島田さん兄弟なのです。

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「21世紀の変人たち」とする「真面目」な話

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レオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、コペルニクス、空海 etc。これまで世の中を変えてきた人たちは、ほとんどが「非常識」な考えを持つ「変人」たちでした。この連載では「21世紀の変人たち(=クリエイター)」に焦点を当て、彼らが何を考えて...もっと読む

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コメント

kusanagi_yuushi 人がモノを買うという行為が、神話から物語へと変遷していく過程。 6ヶ月前 replyretweetfavorite

Qreators 食のトレーサービリティ(追跡可能性)は進んでいるけれど、洋服はまだ少ない。次は洋服にもその波がくるはず。 https://t.co/EqoWZ84pQU... https://t.co/e1RUrmfphf 6ヶ月前 replyretweetfavorite

xmauve9 ""ただ、もしかしたら今後は自分で「何がラグジュアリーか」を定義する時代になるのかもしれません。"" 6ヶ月前 replyretweetfavorite

arisa_kamata cakesインタビュー、後編も公開されました🌞🌞 ほんとの贅沢ってなんだろね、みたいな話です🍀🍀 《前編》 https://t.co/BV4y1A1eDr 《後編》 https://t.co/yMT5Ty6MYN https://t.co/u5lK3OC8zt 6ヶ月前 replyretweetfavorite