桜ノ雨

第6回 春 音浜高校一年 鈴(リン)

合唱部の練習見学から思わず逃げ出してしまった鈴。気になるけれど、もう一歩が踏み出せない…。鈴は、再度合唱部の練習を訪れる。

ボーカロイド楽曲の名曲「桜ノ雨」を原作にしたノベル第2弾『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』の発売を記念して、第1弾ノベル『桜ノ雨』の一部を公開します。



「うあ……感覚が、なくなってる……」
 部室を出たとたん、アタシは人目も気にせず廊下に座り込んでしまった。
「あたしも、もうダメ」
 めぐも、その場でひざをついてしまった。体をよじってふくらはぎをさすっている。
 アタシとめぐは放課後、お目当ての茶道部を見学してみたのだけれど、正座のしすぎで足の感覚がなくなり、早々に部室を抜け出したのだった。
「つか、アタシそんなに和菓子好きじゃなかったんだよね……」
「そこは最初に気づこうね」
 通りすぎる生徒たちは何事かという目でこっちを見ていくけど、とても立てる状態じゃなかった。
「鈴、その座り方はやばいよ。パンツ見えそうだよ」
「いや、わかってるけどちょっと待って」
「どうしようかな」めぐはちいさくため息をついた。
「あとは合唱部か手芸部を見てみたいんだけど、鈴はどうする?」
「合唱部?」
「うん。ずっとピアノ習ってたし、いいかなって」
「へえ……」
 そういえば、蓮はどうしているんだろう。迷惑かけてないかな、って、迷惑かけたのはアタシのほうだ。
 掃除だってサボっちゃったし、謝りに行ったほうがいいのかな。アタシのせいで蓮が困っていたらどうしよう。
 いいや。こんなに悩むなんてアタシらしくない。
「めぐ」
 アタシは感覚のない足で立ち上がった。じーん、とつま先から痺れが走った。
「じゃあ、これから合唱部に行ってみない?」
 めぐはアタシを見上げて、いいよ、と言った。

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桜ノ雨

スタジオ・ハードデラックス /藤田遼 /halyosy

「初音ミクたちが学園生活をしていたら――」 230万超の動画再生回数を誇るボーカロイド楽曲『桜ノ雨』のノベル化第2弾『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』が発売中!cakesでは、前作『桜ノ雨』の一部をご紹介します。(月・木更新) ...もっと読む

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Jim_notFound 例のあのパン思い出して涙なしではみられない。 https://t.co/ldeuCXdkhC 5年弱前 replyretweetfavorite

PHPcomix 現在cakes(ケイクス)では、『桜ノ雨』「 5年弱前 replyretweetfavorite