自分の意志を失うと洗脳リスクは急激に高まる
日本にはあらゆるところで洗脳される危険がはびこっている。逆に言うと、何ひとつ洗脳にかかっていない人の方が少ない。学校では時代にそぐわない道徳やルールを教え続け、マスコミは偏向した報道を繰り返し、理性的な人でも、あり得ないデマに翻弄される。東日本大震災の直後、その実態は誰もが目にしたと思う。
物事をよく理解せず、相手の言うままにカネを払い続けていたら、5千万円もの大金になっていた……。「他人に迷惑をかけてはいけません」「借りたものは返しなさい」「責任逃れは悪です」などと教え込まれた無知な者たちの有り様を示すシーンだ。(『闇金ウシジマくん』ホストくん編は21巻、22巻)
日本のインフラは充分に整い、住環境は素晴らしい。着実に成熟を深めている国だ。一方で、いろんなものが揃いすぎているぶん、選択に疲れた人たちが騙されやすくなっている。洗脳社会化が、進んでいる状態とも言えよう。
これだけ情報があふれ、選択肢が多い世の中だから、自分で思考するのは重労働かもしれない。だけど善悪の区別や自分の行動を、誰かのアドバイスどおりにしていてはダメだ。辛くても疲れても、思考を止めてはいけない。
自分の意志を失ったとき、洗脳されるリスクは急激に高まるし、生きる意味をも失いかねない。 経験値の高い人からの、有用なアドバイスは聞いてもいい。けれど、鵜呑みするのは危険だ。疑いの目を、失ってはいけない。
詐欺師や出来損ないの上司たちの「君の意志や判断はいらない」「私を信用しなさい」「真実を知りたくありませんか?」などという薄っぺらい言葉に、心がふらつくようなら、自分の思考を失いかけている危ないサインだ。
社会人が苦境に立たされるパターンで、最も多いのはカネにまつわる問題だ。仕事や人生の悩みとかいうのも、よくよく突き詰めていくと、カネへの執着が根本に横たわっているケースがほとんどだ。
借金が悪いと言っているわけではない。
返せるアテがあれば何とかなる。しかし、アテがない人は、詐欺じみた違法まがいなことに手を染めたり、ややリスクの高い身体を張った仕事をしたりして、手っ取り早く金を稼ごうとする。
これが転落の始まりだ。
例えば、あれだけ問題視されたにもかかわらず、ホストにハマって掛け金が払えず、風俗店で働く女性の話は、いまもよく聞く。私の回りにも、何人かいた。女の子がホストクラブで気分よく飲んだら、ひと晩で100万円ぐらい、すぐに使ってしまう。普通の会社に勤めている女性には、まず払えないだろう。
郊外に行くと、少し事情が変わる。一例として、出勤中、車でガードレールにぶつかり、その修理代を行政側から100万円ぐらい請求されて、支払うためにソープで働いているOLの話を聞いた。
また東日本大震災の被災地では、地震で実家の屋根瓦がすべて落ち、怪しい瓦業者のローンに騙されて、300万円近い借金を抱えてしまった女性もいる。彼女は返済のため、デリヘルで働いているという。
その女性は毎晩、デリヘルの事務所に出勤。デリヘルの仕事を終わらせ、コンビニで買った揚げ物や菓子パンを、車の中で食べるのがストレス解消になっているそうだ。挙げ句、ブクブクに太ってしまったという。
何というか……ため息が止まらない。ホストの掛け金も、ガードレールの費用も、瓦の代金も、どうして払わなくちゃいけないのだろうか?
マジメ人間の固まったマインドが利用される
何歩か譲って返済義務があったとしても、100万円単位のお金になるはずがない。明らかに誤魔化されている。やりたくもない性的な奉仕をしてまで、請け負うことはないだろう。
風俗嬢の例が特殊なわけではない。世の中には、わけのわからない借金を押しつけられ、その返済に窮して人生を台無しにしている人が、たくさんいるのだ。
借りたカネはもちろん、返さなくてはいけない。ビジネスでの負債は、損失を与えた相手にきっちり返すべきだ。
しかし、個人レベルで理屈の通らない額の借金を押しつけられたとき、返さないといけない道理はない。その借金額が返済能力をとうに越しているなら、自己破産など債務整理の手続きを取ればすむ。
要は、踏み倒せばいいのだ。
誤解されるといけないが、カネの借り逃げを推奨しているわけではない。返したいけれど、どうしても返せないのだとしたら、法律的な救済策はちゃんとある。その意味で日本のセーフティネットは優れているのだから、手続きを踏んで、利用すればいいだけのことだ。
私から言わせれば、物事を知らなさすぎる。もしくは、真面目すぎる。借金は何が何でも絶対に返さないといけない、返すのが人の道だという、間違った観念にとらわれているのだ。
この真面目さの原因は、どこにあるのか。私は、「他人に迷惑をかけてはいけません」「借りたものは返しなさい」「責任逃れは悪です」などと説いてきた、戦後の義務教育全般にあると考えている。
真面目であることが正しいと教えこまれてきた人は、たとえ詐欺だとしても、引き受けた借金は絶対に返さなくちゃいけないと思いこんでしまう。詐欺ビジネスは、マジメ人間の固まったマインドを利用して成立している側面もあるのだが、戦後の義務教育に何の疑いも抱かずに生きている人は、いつ被害者になってもおかしくはないと言える。
薬物依存者も、自分で思考することから逃げた人たちと言える。
アーティストのASKAや元プロ野球選手の清原和博など、経済的にも地位も満たされていたはずなのに、違法薬物の使用を止められなかった。