ハナミズキ、小さな恋のうた…「J-POPスタンダード」はこうして登場した

JOYSOUNDは総合ランキングとは別に、10代から60代までの世代別ランキングを発表しています。そこから見えるのは「分断」でした。それはつまり、「ヒット」自体が成立しなくなったことを意味するのかもしれません。
音楽ジャーナリスト・柴那典さんがその実情と未来への指針を解き明かす新刊『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)。その内容を特別掲載します(毎週火曜・木曜更新)。

「J-POPスタンダード」の登場

 カラオケの人気曲が新曲中心から定番曲中心へと移り変わっていった状況をJOYSOUNDを運営するエクシングのコミュニケーション戦略グループグループ長・高木貴はこう分析する。

 「90年代は、新曲をカラオケで歌うということが、ある種のステータスや格好よさとして見られていたと思うんです。僕自身もそうでした。新曲が出たら『ばっちり覚えなきゃ』と思って、誰よりも早く入れて歌おうと思ってました。そういうことが起こっていたのが90年代だったと思います。でも、今はそういう傾向はカラオケの場では起こっていない。その代わりに定番の曲が人気になっています」

 一方、90年代のCDバブルの時代がむしろ異常だったと同社編成グループグループ長・鈴木卓弥は指摘する。

 「私の仮説では、もともと『ハナミズキ』のようなタイプの曲、つまり歌詞に共感できる曲、心に訴えかけるような曲の人気も根強くあったと思うんですね。ところが90年代というのがある種異様な時代だった。
 短期的にバカ売れするシングルヒットが量産されたので、そういう曲が目立たなくなってしまった。爆発的にヒットするけれど、半年後には歌われなくなってしまうような曲が続出していた。そういう状況が落ち着いたので、もともとあった定番曲がランキング上位になったように見えたのではないかと私は思います」

 リリース時点では無名だった曲が新たな定番として注目され、ランキングを上がっていく例もある。
 2015年の年間3位となった中島みゆき「糸」がその代表だ。リリースされたのは1992年。アルバム『EAST ASIA』のラストトラックとして収録され、1998年にシングルカットされた。当時はドラマ『聖者の行進』の主題歌に起用されているが、この時点ではオリコン週間シングルランキングTOP10入りも逃し、そこまで大きな注目は集めていない。

 ところが、2004年に、Mr.Childrenのフロントマン桜井和寿とプロデューサーの小林武史が中心となって結成したBank Bandのカバーアルバム『沿志奏逢』で初めてこの曲が取り上げられると、その後、徐々にカバーされる対象として楽曲の人気が広がっていった。

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ヒットの崩壊

柴那典

「心のベストテン」でもおなじみ音楽ジャーナリスト・柴那典さん。新刊『ヒットの崩壊』では、アーティスト、プロデューサー、ヒットチャート、レーベル、プロダクション、テレビ、カラオケ……あらゆる角度から「激変する音楽業界」と「新しいヒットの...もっと読む

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コメント

0501Can @shiba710さんから @cakes_PR #J-POPスタンダード 2年弱前 replyretweetfavorite

consaba 「90年代というのがある種異様な時代だった。」「カラオケが新曲をチェックする場から、みんなが知っている曲を歌う場に変化していった。」 #ss954 2年弱前 replyretweetfavorite

shiba710 ちなみに今年のJOYSOUND年間ランキング1位は浦島太郎(桐谷健太)「海の声」、2位が中島みゆき「糸」、3位が秦基博「ひまわりの約束」でした。 https://t.co/7ZUjl640Nc 2年弱前 replyretweetfavorite

tobal17 趣深い: 2年弱前 replyretweetfavorite