「僕、家庭が趣味なんです。特に嫁はんが趣味」※1
笑福亭鶴瓶は堂々とそう宣言する。
今でも手帳に家族写真を忍ばせ、中でも大切にしているのが、夫婦が笑顔で撮った2ショット写真だ。結婚記念日やお互いの誕生日などの記念日には、手紙を送り合う。
妻・玲子が韓流スターにハマれば、徹底的に調べ上げ自分もファンになり、サプライズで韓国旅行にも行く。
「今でもね、だんだんだんだん好きになる。今でも照れまんねん、嫁はんの前で」※2
とラブラブだ。
間違いなくすべてにスケベな鶴瓶の原動力は妻を筆頭にした家族の存在だろう。
30までは俺を自由にせい
だが、最初からずっとそうだったわけではない。
20代の頃は、「芸のためなら女房も泣かす」状態だった。家に帰ると嫁が愛想を尽かせて逃げていなくなってしまったこともあったという。
芸人は無茶するのが当たり前。そんな価値観に囚われ、芸人仲間たちと朝まで浴びるように酒を飲み、とことん遊んだ。
「家に嫁はんいますから帰ります」
なんてことは口が裂けても言えなかったし、「ダサイ」と思っていた。
深夜ラジオの出演を終えると、先輩たちが飲んでいる席に入っていき、先輩芸人たちを笑わせた。松竹も吉本も関係ない。彼らが喜んでくれるのが嬉しかったし、先輩たちもそんな鶴瓶をかわいがった。
だが、ある日、その席に電話がかかってきた。
玲子からだった。
(無粋なことをする。)
憮然として、電話口に出て「どうした?」と尋ねると、玲子は泣いていた。いつもとはまったく違う切実な声で言った。
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