「子どもはわかりやすいねぇ~」
そう言う大人が、本当に子どものことを理解していたことなんか、ない。
子どもだったころ、私は、あやかちゃんと友達になりたかった。あやかちゃんは静かな子だった。細くて、弱くて、ちいさくて、いつも困ったような顔をしていた。
だいたい、「……うん。」としか言わなかった。だから、あやかちゃんの周りには、あやかちゃんに「……うん。」と言ってもらいたい用事のある子ばかりが集まった。
「そのお菓子ちょうだいよ」
「……うん。」
「おもちゃ貸してよ」
「……うん。」
あやかちゃんの手には、いつもなんにも残らなかった。
そうして全部をあげてしまって、あとはぽつんと立っている、細くて、弱くて、小さくて、「……うん。」しか言わないあやかちゃん。彼女のことをまわりの大人は、やっきになって守ろうとした。しだいに、「あやかちゃんに近づく子どもはみんな、あやかちゃんから何か奪いたい子なのだ」と決めつける大人も出てきた。