TSUTAYAと私の「永遠」

「まだ読んでないの?」「絶対観るべき!」といった圧迫推薦をされたことはありませんか。若くしてデビューした詩人の文月悠光さんは、オススメの嵐にきりもみにされてきたそうな。そんな文月さんの苦手意識が触発されてしまうのが、文化系のオアシスTSUTAYAでした。あまたの作品がひしめく中で、文月さんは何を見出すのでしょうか。

「今ハマっている漫画は?」
「好きな映画監督は?」
「影響を受けたアーティストは?」

 これらの質問が私はことごとく苦手だ。

「知らないので……」と逃げてみたり、困惑して黙り込んだり。「相手は話のきっかけを探っているだけ」と思える場合でも、びくびくしてしまう。作品名は頭に浮かびながらも、それが他人にどう受け止められるのか気になって、冷静に答えられない。挙げる名前によって、私自身のセンスが値踏みされてしまう。その査定が恐ろしいのだ。一部の文化系の人々を、私は憧れと共に激しく恐れている。

「そう気負わずに、めくるめく作品世界を楽しんでみたらよいのでは?」と担当編集者のN氏に勧められ、ある場所を訪ねることに。文化系のオアシス、TSUTAYAである。

「絶対に観るべき!」を突きつけないで

 そもそも、なぜ文化系コンプレックスをこじらせてしまったのか。そう考えて、私は八年前に浴びせられたある一言を思い起こした。

 札幌で過ごした高校時代、私は詩の創作と、美術部の活動に明け暮れていた。詩の新人賞を受け、詩を書く人に認知されはじめた高校2年の頃、ネットで同い年の男の子と知り合った。自分も詩を書いている、という彼は、メールでこう尋ねてきた。

「自分はジャズや洋楽をよく聴くのですが、文月さんはどんな音楽が好きですか?」

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臆病な詩人、街へ出る。

文月悠光

〈16歳で現代詩手帖賞を受賞〉〈高校3年で中原中也賞最年少受賞〉〈丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞〉。かつて早熟の天才と騒がれた詩人・文月悠光さん。あの華やかな栄冠の日々から、早8年の月日が過ぎました。東京の大学に進学したものの、就職活...もっと読む

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コメント

imaginary_organ 「まだ読んでないの?」「絶対観るべき!」といった圧迫推薦をされたことはありませんか。 https://t.co/Z3ujbbkmyu 10ヶ月前 replyretweetfavorite

consaba 文月悠光 「「今ハマっている漫画は?」「好きな映画監督は?」「影響を受けたアーティストは?」 これらの質問が私はことごとく苦手だ。」 #ss954 #radiko 11ヶ月前 replyretweetfavorite

takasago_fune  何か見る行為はそれで自己完結して、そこからどう熟成させていくのかは本来は個人個人の話なんだと思います。 11ヶ月前 replyretweetfavorite

sionsuzukaze  詩人ならこうあるべき、これを見ないと駄目、これを知ってないと駄目、そういう諸々が日本の現代詩を頭でっかちのつまらんものにしてるのよね。 11ヶ月前 replyretweetfavorite