「……私、今日、婚活パーティーに参加してね、思ったことがあるの……」
そうだ、今日アキと話したいと思ったのは、婚活パーティーのことだった。リビングであんなシーンを見てなかったら、イの一番に話していたろうに。
「竜平さんから聴いてるわ。幕田くんと会ったんでしょう?」
「知ってるんですか? 彼のこと」
夫の竜平からの紹介とはいえ、アキが知ってるのは意外だった。
「まぁね。可愛い男の子じゃない?」
「そうですか? でも、そんなことはどうでもいいんです。私、彼に連れられて今日婚活パーティーに行ってきたんです」
「へぇ。どうだったの? いい人はいた?」
アキは直截に感想を聞いてくる。
「うん、まぁ、いい人はいなかったかな。惜しい人はいたけど」
「惜しいって?」
「性格だけならいいかな、でもどうしても歯並びが許せないとか、ルックスはツボなんだけど、傲慢そうだとか」
「なるほどね。歯並びくらい、治療でどうにでもなるけどね」
「そう、そこ。どうにでもなることを放置している美意識の低さが嫌なの。でも、問題はそこじゃないんです。うーん、なんか違うというか、ああいうところで結婚相手を探すのは、純粋じゃない気がするんです。どこか打算的というか」
「……ふーん」
ユウカは大きく同意されると思って話したのに、いまいちな反応しか返ってこないことに不安を感じた。東京にいた頃のユウカなら、相手の反応なんて気にもしなかったが、ここは自分が知ってる場所じゃない。しかも目の前にいるのは、自分と全然違う環境で生きてきたアキだ。
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