音楽シーンを襲う異変
「最近のヒット曲って何?」
そう聞かれて、すぐに答えを思い浮かべることのできる人は、どれだけいるだろうか? よくわからない、ピンとこないという人が多いのではないだろうか。
かつてはそうではなかった。
昭和の歌謡曲の時代も、90年代のJ-POPの時代も、ヒット曲の数々が世の中を彩っていた。毎週のヒットチャートを見れば、何が流行っているのか一目瞭然だった。テレビの歌番組が話題の中心にあった。
でも、今は違う。シングルCDの売り上げ枚数を並べたオリコンのランキングを見ても、それが果たして何を示しているのか、判然としない。流行歌の指標がどこにあるのかわからない。それが今の日本の音楽シーンの実情だ。
果たして何が起こっているのか?
「音楽不況だからしょうがない……」
そんなことを言う人もいる。確かにCDの売り上げは右肩下がりで落ち込んでいる。
しかし、音楽の〝現場〟には、今も変わらぬ熱気がある。それは、音楽ジャーナリストとして20年近くロックやポップ・ミュージックについて取材と批評を続けてきた筆者の正直な実感だ。音楽フェスの盛況、ライブ市場の拡大もそれを裏付ける。
ヒットをめぐる構造的な問題
では、なぜヒットが生まれなくなったのか?
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