義母へのマウンティング中、驚きで言葉を失った

菜園生活に奮闘する金田さんのドタバタの日々をユーモアたっぷりにお届けしていくこの連載。かつてはシティー派だった金田さんですが、家庭菜園を始めてから、田舎通いが大好きなります。長野に暮らすお義母さんは、野菜作りの大先輩。その畑に憧れながらもプライドから見栄を張ってマウンティングしてしまった金田さん。でも、ある光景が目に入ると言葉を失ってしまい…。

「どう、私の畑は?」

家庭菜園を始めるまで、私は夫の実家訪問に、あまり気が乗らなかった。

そこは長野県の南部。南青山ならともかく、あるのはほんとの山ばかりで、新宿伊勢丹もニコタマ高島屋もない。夫の子ども時代の話も、親戚縁者の近況も、さほど興味がないのである。

ところが畑を始めたとたん、私は急に田舎通いが楽しくなった。実家に着くと、挨拶もそこそこに義母の畑に飛んでいく。

夫の母は野菜作りの大先輩。自宅の敷地に菜園をもち、家族のためにクワをふるっていた。私たちが家庭菜園を始めたと聞き、誰より喜んでくれたのは彼女だった。

「どう、私の畑は?」

あとから来た義母が、笑いながら聞く。

うちの畑は、畝と通路がくっきり分かれているが、義母の畑はその境が緩やかだ。あちこちに咲く花が野菜を引き立てている。


義母の畑には、花もたくさん植わっています.

私もこんな畑にしたいのだが、悔しいので顔には出さない。

「まあまあですね」

「やっとトウモロコシができたの。タエちゃんの畑は、もう収穫した?」

「はい。大豊作でしたよ。ほっぺが落ちるほどうまかったです」

落ちたのはハクビシンのほっぺだが、それは黙っておこう。

「最近はトマトがよくとれてね」

「うちだって、食べきれないほどとれますよ」

とマウンティングしてから、どれどれとトマトの畝に目をやった私は、驚きで言葉を失った。

(このトマト、なんでこんなにピカピカなの!? )


私を驚かせた、輝くミニトマトです。

なんで光っているの、このトマト!?

動揺を隠しながらトマトに手をのばし、ひとつつまんで角度を変えてみた。

(光線の具合じゃないぞ。こいつ、自分で輝いてる!?)

「おいしそうでしょ? そこはちょうど屋根があるからね。トマトは雨にあたるとよくないから」

義母の畑は、敷地内にある別棟の庭だ。トマトはその軒下に植わっていた。トマトは雨が嫌いだが、雨にあたらないだけで、この輝きが出るとは思えない。


義母のトマトは、こんな場所で育っていました。

「なんでこんなに光ってるんですか?」

こらえきれず、義母にたずねた。

「なんでかね? わかんないわ」

くっそ~。嫁には教えないつもりか。もしや長野には、「トマトピカ~ル」なんて肥料があるのだろうか。

「肥料は何をやってるんですか?」

「ふつうのよ。JAで売ってるやつ」

しらをきるつもりだな。よーし、自分でつきとめてやる。

義母が母屋へ戻るのを待ち、私は納屋からもってきたスコップを、畑につきさした。

持ち上げた土は、驚くほどふっかふかだった。大量のミミズが顔を出し、掘れば掘るほどわいてくる。

(きっとミミズが土を肥やし、トマトを輝かせているんだ!)

私はしゃがみこむと、のたくるミミズをかき集めた。

(こいつらを300匹くらい持ち帰って畑にまけば、あの粘土質の土もふかふかになるぞ)

そのときだ。

「何やってんの?」

はっと顔を上げると、畑の脇で夫が仁王立ちしていた。

「べ、べつに……」

あわてて、ミミズに土をかぶせる。

「ぜったいダメだよ」

「何が?」

「あなたが何を考えてるのか、ぼくにはわかってるんですよ」

「……ちっ」


あとで調べてわかったのですが、彼女が育てていた「千果(ちか)」という品種は、輝きが特長だったのです。

契約農家になりたい

長野へ通う楽しみのひとつは、地元のJAの直売所をのぞくこと。都内近郊のホームセンターと違って、プロの農家が使う道具が手に入る。

なかでも私のお気に入りは出荷資材コーナーだった。野菜を束ねる専用の輪ゴムやロゴ入りテープ、野菜別の専用袋も売られていて、楽しいのだ。


野菜を束ねる専用の輪ゴムは、食品衛生法の規格にも適合しているんだそうです。

「私もこういうのを使って、野菜を友だちに送りたいんだよね、N村さんみたいに」

農園の隣の区画のN村さんは、作った野菜を家族や知人に送っている“契約農家”だ。「畑通信」まで手作りしているそうで、おじさんのくせに、やることがかわいいったら。

「あのねぇ、そういう無計画な計画は、野菜が安定供給できるようになってからにしてくださいよ」と、夫があきれて言った。

「じゃあさ、野菜のあるときだけ無人直売所をやるっていうのはどうかな? 『金田青果』ってロゴ入りエプロン作って、店番しちゃうの。お金ちょろまかされると困るから」

「店番がいる時点で、『無人直売所』じゃないよね?」

「……ちっ」

我が夫には、遊び心というものが欠如しているのだ。

雨水タンクはフランス製?

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シロウト夫婦のズボラ菜園記

金田 妙

毎日、採れたての新鮮な野菜が食卓にのぼる。そんな生活に憧れる人は多いのではないでしょうか。自分で野菜を作れればよいけれど、畑はないし、仕事は忙しいし、週末は遊びたいし…。それでも、思いきって家庭菜園の世界に飛びこんでみたら、おもしろい...もっと読む

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コメント

heimenko すごい気持ちわかる。笑 QT  1年以上前 replyretweetfavorite

bionic_giko 畑好きの父の娘←ボクはダメ。植木鉢もすぐ枯らす。でもこの話は本当にわくわくする! 2年弱前 replyretweetfavorite