祖父は人を殺していないと思う。
ルネおじいちゃんを前にしながら、私は亡き祖父に想いを馳せた。昭和8年生まれの祖父は、第二次世界大戦当時、まだ少年だった。戦争体験を語ってくれたことは、私の記憶にある限り、ただ一度きりである。
その朝、祖父はNHKの連続テレビ小説を見ていた。私はまだ8歳くらいの子どもで、よく意味が分からないままテレビ画面を眺めていた。どこかの学校の校庭が映し出され、子どもが車輪のようなものの中で手足を突っ張ってぐるんぐるん転がっていくシーンになった。
私は、ハムスターみたいだな、と思った。昭和の子どもたちは、人間用の回し車で遊んでいたんだろうか、と。
「おじいちゃんもヨカレンであれをやったんだぞ」
急に、祖父が画面を指さした。
ヨカレン?
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