大学進学も無理と思われた僕が医者になる

田舎町の貧しい崩壊家庭に生まれたジム少年は、ある夏の日、ふらりと訪れた手品用品の店で不思議な女性と出会います。その女性は「何でも欲しいものを出せるマジック」を教えてあげるから毎日店に来るように言いました。半信半疑でジムは店に通い続け、そして自分が変わっていくことを実感します。そしてついに「最強のマジック」を教わる日がきます。「取り扱い注意」のその中身とは……。

僕は自分が医者になることを「知っている」

「10個書き出してね。何を生み出したいか考えて。どんな人間になりたいかを書き出すの。それを明日持ってきてちょうだいね」

書く宿題はそれまでなかったけど、僕は言われたとおりにした。

1 アパートを追い出されない

2 クリスとデートする

3 大学に行く

4 医者になる

5 100万ドル

6 ロレックス

7 ポルシェ

8 豪邸

9 島

10 成功

翌日、ルースにそのリストを手渡した。ルースはそれを読んだ。

「リストをつくる前に心を開いた? わたしが言ったみたいに」

僕はうなずいた。ルースに嘘をつくつもりはなかったけど、心をどうやって開いたらいいのか僕はよくわからなかった。

「お医者さんになりたいなんて、知らなかったわ」

4年生のときに「仕事の日」というのがあって、町の人が来て仕事について話をしてくれた。消防士はちょっとかっこよかったけど、火事が起きるのを待ってる時間がほとんどだって言っていた。次の人は違っていた。僕たち一人ひとりにほほ笑みかけてくれた。その人はお医者さんで、子供だけを診る小児科医っていう仕事だった。

「病気の人をお世話する仕事、とくに子供たちをお世話するのは、光栄でありがたいことなんだ。この仕事ができるのは、すごく特別なタイプの人だけだ。わたしは子供の頃ひどい喘息持ちで、死ぬところだった。母がお医者さんに連れていってくれて、そのときのお医者さんの笑顔をいまも憶えている。その人を見た瞬間、助かったと思った。そのとき、お医者さんになろうって決めたんだ」

生徒の前に立って仕事の話をしているその人は輝いていた。口を開けたままその人を見つめていた僕に気づいたらしく、話が終わって休み時間に入ると、その人が僕のところに来て名前を聞いた。

僕は優等生じゃなかった。なぜ勉強するのかもわからなかった。勉強する場所もなく、必要なときに手助けしてくれる人もいなかった。テレビがけたたましく鳴っていたり、誰かがけんかをしたりしているなかでは集中できなかった。僕が遅刻しても宿題ができていなくても、理由を聞かれたことはなかった。僕が口を開くのは冗談を言うときだけで、それでトラブルに巻き込まれることもあれば、無視されることもあった。でもこの人には、聞きたいことが山ほどある。

「人が死ぬのを見たことある? 生まれるところは? 注射はするの? 子供が泣いたらどうするの?」

小児科医の生活についていくつも脈絡のない質問をすると、一つひとつていねいに答えてくれた。帰り際には、まるで大人にするように握手をしてくれた。

「いつか君もお医者さんになりそうだね」

大学に行くことも、医師になることも、僕には月面歩行くらい不可能なことに思えたけれど、その人は冗談を言っているようには見えなかった。

「君は思いやりのある子だってわかったよ。すごくいいお医者さんになる。無理だなんて思わないで」

その人は振り向きながらもう一度僕に笑いかけて、部屋を出ていった。

「無理だなんて思わないで」

その瞬間、家族の誰も大学にさえ行ってないのに、僕の仕事はこれだと決めた。

ルースに言った。「そう、お医者さんになりたいんだ」それから言い直した。

「僕は自分が医者になるって知ってるんだ」

大学に行くことさえ頭になくて、医学部なんて想像もつかなかったけれど、その瞬間、そうなることを確信した。ルースは手を叩いた。まるで僕が何かすごい偉業を成し遂げたみたいに。

「それよ。それなのよ」

「何が?」

「知ってるってこと。お医者さんになるって知ってて、もうお医者さんになったみたいに頭にその姿が描けるってことよ。お医者さんの目で世界を見るってこと」

僕は目を閉じて試してみた。難しかった。自分の白衣をしげしげ見ている医師の姿をぼんやり思い浮かべるのがやっとだった。

「まずからだをリラックスさせて、頭を空っぽにしなくちゃならないの」

ルースは最初の練習をもう一度やってくれた。

「さあ、注意力が戻ったわね。今度は意志を働かせるの」

「え、何?」目を開けた。

「意志よ。からだを緩めて、頭を空っぽにして、心を開いたら、はっきりとした意志を掲げやすいの。お医者さんになりたいのよね。すごくはっきりしてるわよね」

僕はまた目を閉じて考えた。僕は医者になる。はっきりと決めている。医者になるとはっきり決めている。どの言い方がいいかわからなかったので、ひととおり唱えてみた。

「今度は窓の外を眺めているところを想像して。窓は曇ってる。意志っていうのは霜取り装置みたいなものなの。何度も何度も意志を掲げているうちに、だんだんはっきりと見えてくるわ。曇りがどんどん取れていくみたいに」

何度も何度も試していると、最後に窓の向こうに白衣を着た僕が見えた。

「これをずっと続けるのよ。毎日毎日。何週間も。何カ月も。何年も。窓の向こうにはっきりと見えたら、それが現実になる」

「本当に? このマジック、ほんとに成功するって約束する?」

「ええ、するわ。でも、努力が必要よ。かなえるのに長くかかるものもある。それに、あなたが望むかたちでそれがかなうとは限らない。でも約束するわ。リストに書いたことはすべて、心で感じたことはすべて、頭で考えて想像したことはみんな、それを本当に信じて一所懸命努力すれば、必ずかなうわ。いい成績を取らなくちゃいけないし、医学部に行って、お医者さんになるための勉強をしなくちゃいけない。あなた自身がそれを引き寄せて、自分が想像したものになるの。頭と心を使えば、それができる。約束するわ」

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この連載について

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スタンフォードの脳外科医が教わった、人生の扉を開く最強のマジック

ジェームズ・ドゥティ

スタンフォード大学の脳外科医、ジェームズ・ドゥティ氏は子供時代、アル中の父、鬱病の母の面倒をみながら生活保護で暮らしていました。大学進学など想像も出来なかった人生を変えたのは、手品用品店で出会った女性から教わった「マジック」でした。そ...もっと読む

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President_Books 「人生なんて運ですべてが決まる不公平なものだと思っていた。両親の生きてきた小さくて悲惨な世界を逃れられるとも思えなかった。ルースに出会って、自分を違う目で見るようになった。世界は限りない可能性に満ちていると信じるようになった」 https://t.co/PqXiYBwHUK 約3年前 replyretweetfavorite

President_Books 「ルースが教えてくれたこのマジックはそれまで想像したどんなものよりすごかった。しかも、ずっと僕の中にあった。僕が知らなかっただけだった」 |人生の扉を開く最強のマジック https://t.co/PqXiYBwHUK 約3年前 replyretweetfavorite

HHIKARI7 「あなたがやらなければ、誰かがあなたの現実をつくることになる」>良い言葉。憶えておこう。 約3年前 replyretweetfavorite

President_Books 「僕が教わったのは、トランプや親指のトリックよりはるかに強力だった。これで欲しいものが手に入る。医者になるんだ。100万ドル稼いでやる。強い人間になる。成功してやる」 https://t.co/PqXiYBwHUK 約3年前 replyretweetfavorite