歌い方で「みんなの苦悩を引き受ける」
大谷ノブ彦(以下、大谷) 今回は宇多田ヒカルのニューアルバムの話をしましょうよ。『Fantôme』、ほんとに素晴らしい!
柴那典(以下、柴) まさに2016年を代表する一枚ですね。この連載では前に「次は『どうやって死を乗り越えるか』がテーマのアルバムになるはず」と言いましたけど——。
大谷 まさにその通りだった。
柴 母親の藤圭子さんに捧げるような一枚になったと思います。
大谷 そうそう、僕、今年の夏フェスのDJで、宇多田ヒカルがカバーした尾崎豊の「I LOVE YOU」をかけたんです。そうしたら大合唱が起こって。
柴 へえ!
大谷 尾崎豊のトリビュート盤に入ってるんですね。
BLUE~A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI
柴 そんなバージョンがあるんだ。
大谷 その「I LOVE YOU」を聴くと藤圭子さんを思い出すんですよ。歌詞も母親への思いを歌った内容に思えるし、しかもめっちゃビブラートをきかせて歌うんですけど、それが藤圭子さんの歌い方にそっくりで。
柴 いつもの歌い方とちょっと違うんだ。
大谷 そう! それでこないだ桜井和寿さんと話したときにすごくおもしろい話を聞いたのを思い出したんですけど、桜井さん、Mr.Childrenとウカスカジーでは歌い方を変えてるんですって。