生きる理由を探してる人へ

未来は常に過去を変えている!

「自殺=悪」の決めつけが遺族を苦しめることもある。それでも自殺は「しないほうがいい」。 追いつめられていても、現状から脱出して「違うかたちで生きる」という道を提示できないか。 変えられるのは未来だけじゃない。
芸人・大谷ノブ彦さんと作家・平野啓一郎さんがおくる異色対談を収めた新書『生きる理由を探してる人へ』の「第二章 未来は常に過去を変えている!」より、一部抜粋した特別版です。

■ やり過ぎとバランス

平野啓一郎(以下:平野) 僕は、大人になって、いいことと悪いことの区別がつくようになるのも大事だけど、「程度がわかる」ってことも大事だと思うんですよ。

大谷ノブ彦(以下:大谷) バランスですね。

平野 ええ。「それはやり過ぎだろ」っていうのがわかるかどうか。その感覚を共有できていない人と付き合っていくのはちょっとつらいところがありますね。

大谷 その感覚が共有できない人が、いま多くなってますよね。

平野 善悪の問題だけではなく、小説を書いているようなときでも、「ここでここまで書くのはやり過ぎかな」みたいな微妙な感覚の中で全部、判断してるんですよね。その場面を入れるか、やめるかではなく、書くことは書くべきだけど、「これでは物足りないか? でも、ここまでいくとやり過ぎかな?」みたいな。

 人に対する態度にしても、似たことが言える。誰かが悪いことをしていて批判をしなければならなくなった場合でも、言い方やしつこさといった程度の問題はあります。そこまではやり過ぎだろうっていう感じを、わりとゆるく共有できている人たちとは仲良く話ができるんですけど、そのやり過ぎっていうのがわからない人と付き合うのは難しい。


■ ホモサピエンスと社会性

大谷 やり過ぎかどうかを見定めるということは、トレーニングできる部分でもある気がするんです。類人猿からホモサピエンスが誕生したことにしても、そのきっかけは、他人の子供を隣の人が育てるというやり方を共有しはじめたところにあったそうなんですよ。要するに、おっぱいが出ないようなときに、「じゃ、こっちに連れておいで」ってことですね。アフリカなんかでは、いまもそういうのは残っているし、日本だって昔はそうだったと思うんです。いわゆるコミュニティの中で子育てをしていくということですね。それがホモサピエンスに進化していくきっかけになり、文明をつくっていったのだとしたら、その頃とは逆になっている現在はどうなのか、という疑問が生まれてきます。いまはもう、隣の家に誰が住んでいるのかもわかんないみたいになっちゃってるんですから。

 ラジオでそういう話をしたことがあるんですけど、やっぱり子供の虐待とかいったニュースを聞けば、胸が痛くなるし、嫌な気持ちになる。「だったら、自分が社会性を身につけられるようなことをやっていこう」ということで、そのために何をやったかを放送で話していくようにしたんですね。すっごく地味なことからでしたよ。まずはマンションのエレベーターで人に挨拶しようってところから始めたんですから。

 そのときに声のバランスが取れていないのが自分でわかったんです。「おはようございます!」って言ったときに相手がビックリしちゃって(笑)、「あっ、これは声がデカすぎるんだ」って。それで今度はちっちゃめの声で言ったら、相手が無反応だったと。そういうところからトレーニングは始まるわけですよ。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

コルク

この連載について

初回を読む
生きる理由を探してる人へ

大谷ノブ彦 /平野啓一郎

「自殺=悪」の決めつけが遺族を苦しめることもある。それでも自殺は「しないほうがいい」。 追いつめられていても、現状から脱出して「違うかたちで生きる」という道を提示できないか。 変えられるのは未来だけじゃない。芸人と作家が語り合う異色対...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

nkdanoji 「「それはやり過ぎだろ」っていうのがわかるかどうか。その感覚を共有できていない人と付き合っていくのはちょっとつらいところがありますね。 」https://t.co/f1VfJqQhQh 約1年前 replyretweetfavorite

consaba 大谷ノブ彦+平野啓一郎 ホモサピエンスと社会性  約1年前 replyretweetfavorite