セーフティーネットとしてのヤクザ」は否定できない—vol.2

暴力団の顧問弁護士をつとめたことで、自らも「反社会的勢力」の烙印を押される憂き目にあい、さらに弁護士資格も失うことになった山之内幸夫さん。そんな苦境にあいながらも山之内さんがかかわってきた「暴力団」という組織は、反社会的勢力であると同時に「セーフティーネット」という顔を持っていました。山口組の元顧問弁護士・山之内幸夫さんのトークショーをまとめた第2回です。(聞き手:今西憲之 構成:平松梨沙 写真:渡辺愛理)

山口組のトップエリートになるのは東大合格よりも難しい?

—山口組には2万人の構成員がいると言われていますが、「執行部」というのはどういった役割を果たしているんでしょうか。

山之内幸夫(元弁護士。以下、山之内) 山口組というブランドを守り育てるための重要な存在です。山口組全体のなかでも、組長から直接盃分けを受けた人間を「直参」と言います。直参も多いときでも120人程度なんですが、執行部はそのなかからさらに絞られて、10人くらいです。並みのヤクザが到達しうる最高の地位が「直参」で、執行部になるにはさらに狭き門をくぐる必要がある。夢のまた夢といえるでしょう。

斎藤三雄(実話誌記者。以下、齋藤) 直参になれる人間だって、割合でいったら、組員の400人に1人とかですもんね。

—東大合格より厳しいですね。

斎藤 厳しいでしょうね(笑)。

—ましてや執行部となれば、上場企業の経営陣に匹敵すると。それなのに今回山口組を抜けた人のうち執行部経験者が5人もいる。

山之内 先に話した「弘道会支配」的な人事だけでなく、頻繁に行われた人事の刷新に納得がいっていない方が多かったのでしょう。一度執行部になった人間を外す、というようなことも六代目体制では行っていたので。本人が納得できていればいいんでしょうけどね。納得できていなかったからよくないんですね。

代紋は「組織の統制と団結のシンボル」である

—山口組は四代目のときにも分裂をしていますが、そのときと今回の分裂では何が違うんでしょうか?

斎藤 当時は、四代目に若頭の竹中正久が就任することをよしとせず、組長代行の山本広を支持する一派が「一和会」を結成、そのまま「山一抗争」に突入する事態となりました。

山之内 今回と前回が決定的に違うのは、分裂した人たちが「神戸山口組」と名乗り、「山口組」の代紋を捨てていないところなんですよ。しかもずうずうしくも「本家」と言っちゃっている。関東の人なんかだと、「そうかも」って思っちゃうよね。

—代紋は「組織の統制と団結のシンボル」とも言われますが、そんなに大事なものなんでしょうか。

山之内 とても大事なものです。山口組が築き上げてきたブランド力の象徴ですから。神戸山口組は、その大事な山菱マークをそのまま利用しているわけです。代紋を変えないというのはうまい戦略ですよ。四代目分裂のときは、親分は一和会に行こうとしたけれど、代紋が変わることに抵抗した組員が親分に離反して山口組にとどまるということもありましたから。実のところ六代目山口組側が、名称使用の差し止め訴訟などを起こすことはできるんですけど、どう考えても裁判所が認めるわけないですからね。

斎藤 代紋がえらいのか親分がえらいのかわからないような場面って、結構あるんですよね。

—そういえば斎藤さんは山菱のマークのついているグッズを収集してると聞きました。どのくらいあるんですか?

斎藤 ざっと20種類くらいありますねえ。名刺とかバッジが有名だと思いますが、灰皿とかにも入ってますよ。灰皿は、持って帰ろうとしたらさすがに怒られましたけど(笑)。代紋グッズを販売しているウェブサイトとかもありますね。脅しをかけるのに利用している一般人もいるくらいですから。六代目体制になってからは代紋グッズの販売も制限されていて、決まったところでしか購入できなくなっていますが。

山之内 代紋にはそれだけの重みがあるんです。恐怖をめいっぱいためこんで長い長い歴史のなかでたくさんの命を奪ってきた、血と涙の結晶ですよ。

顧問弁護士も「反社会的勢力」とされてしまう

—でも先生は、そんな恐怖の代名詞である山口組の弁護を長年していらしたわけですよね。

山之内 それで僕自身まで反社会的団体の一員ということにされたし、最終的に弁護士資格を剥奪されちゃいましたけどね。

—たしかに、新しい弁護士事務所を探すとき苦労されていたのを覚えています。

山之内 そうそう、暴力団組員は銀行口座をつくれなかったりマンションを貸してもらえなかったり、ということがあるんですけど、僕も事務所を借りようとしたら「ダメ」って言われちゃって。

斎藤 僕のようなライターはともかく、先生は内部にきわめて近いところでお仕事をされていたので、苦労も多かったと思います。僕なんかは、組の方から「悪者を食い物にして稼いでいるのはこいつらのほうだ」って、よく指さされますけど(笑)。

—顧問弁護士という仕事について改めてお聞きしたいんですが、顧問料っていくらくらいだったんですか?

山之内 月10〜20万円ですね。

—月に100万円くらいもらってるのかと思いました。

山之内 いえいえ、お金のためにやっているわけじゃないですから。
 山口組の運営に少しでもかかわる人間は、お金については絶対にクリーンにしていないといけません。みんなそれなりに見ていますよ。自分たちの払ったお金がどう使われているかどうかを下の者は見ているんです。そこで適当なことをしていたら絶対に禍根が残ります。執行部の人はとくに気をつけていただきたい。

基本のシノギは賭博、売春、薬物

—ちなみに、組員たちはふだん何をシノギの手段にしているんでしょう?

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山口組 顧問弁護士

山之内幸夫

2万人以上の構成員を擁し、日本最大規模の指定暴力団・山口組。その山口組の顧問弁護士をつとめ、40年以上その歴史を見つめてきたのが、山之内幸夫さんです。法律の守り手である弁護士が、法律の穴をかいくぐる「悪者」であるはずの暴力団のそばに居...もっと読む

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コメント

EndOfData お目に掛かりたくないねそんなもん。一般人が脅しに使うってタチ悪いわ。半グレか。 約3年前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 山ノ内幸夫|山口組 顧問弁護士 https://t.co/e1TKJjkQQZ 任侠道グッズや暴力団グッズ、極道グッズの 代紋入り灰皿、バッチ(徽章)・名刺・湯呑み、書状 https://t.co/yfS8pFqkBq 約3年前 replyretweetfavorite

sarirahira 宣伝だよ宣伝だよ~夜になったからまた宣伝だよ~ https://t.co/4h0CfLM1lW 約3年前 replyretweetfavorite

z7rwsg3y #Yahooニュースアプリ 約3年前 replyretweetfavorite