生きる理由を探してる人へ

自分のことが好きですか?

「自殺=悪」の決めつけが遺族を苦しめることもある。それでも自殺は「しないほうがいい」。 追いつめられていても、現状から脱出して「違うかたちで生きる」という道を提示できないか。 変えられるのは未来だけじゃない。
芸人・大谷ノブ彦さんと作家・平野啓一郎さんがおくる異色対談を収めた新書『生きる理由を探してる人へ』の「序章:自分のことが好きですか?」より、一部抜粋した特別版です。

■ ラジオでの出会い

大谷ノブ彦(以下:大谷) 『オールナイトニッポン』にゲストとして来てもらったのが平野さんとお会いした最初でしたね。

平野啓一郎(以下:平野) そうですね。あれは二年前でしたか? 三年前?

大谷 三年前です(二〇一三年五月)。あのときは正直いって僕、ビビッてるところもあったんですよ。

平野 えっ、そうなんですか(笑)。

大谷 平野作品はかなり読んできてるんですけど、初期のものは難解な印象もあったので、直接会って話をすれば、こっちの心の内を見透かされちゃうんじゃないかな、そうなるとヤバいなって構えてたんです(笑)。

平野 ラジオやテレビなどに呼んでいただくと、相手の芸人さんやタレント、ミュージシャンといった人たちからは、最初はちょっと緊張しましたと言われることも多いんですけど、実際のところはこっちも緊張してるんですよ(笑)。やっぱりそういうメディアは普段いる世界ではないし、とくに生放送となると一度言ってしまうと、取り返しがつかなくなるところがありますからね。出版の世界は一度書いても、これはちょっと書き過ぎかなと思えば、世に出るまでに訂正できるプロセスがあるじゃないですか。それがないラジオなどに出れば、すごく緊張するし、疲れるんです。

大谷 講演やトークショーみたいなものはやられるんですよね?

平野 それはしますけど、事前に準備しますし、聴きに来る人も、僕という人間や講演テーマに関心をもっている人たちに限られているので、少々乱暴なことを言っても、笑って聞いていてくれることが多いですね。最近はちょっとした発言などをあげつらって炎上のような騒ぎになることもありますよね。そういうところに巻き込まれるのは面倒なので、生放送などでは、無意識にどこかで自主検閲している気がしないでもないです。でも、やっぱり出るからには言いたいことを言いたい葛藤はあるし、言うべきこともあるから、それで疲れるんですよ。

大谷 ということは、最初はお互いに構え合っていたんですね。あのとき平野さんをゲストとしてお呼びしたのは、番組の会議でオードリーの若林正恭くんが「平野作品に救われたことがある」と言っていたのがきっかけだったんです。彼はグルメ番組のリポートをしたくても、「おいしい」ってひと言がどうしても言えなくて、その仕事を受けられなかったと言うんです。なぜかといえば「何かを食べて実際においしいって言葉を発したことがそれまでなかったから」と言うんです。だけど、平野さんの作品を読んで、「そういうことを口にできる自分もいるはずだ」という感覚になれたというので、面白いなと思ったんです。

 このあとにも詳しく語っていくことになるんですけど、若林くんが言ってるのは、平野さんが考えられた“分人主義”のことなんですね。「仕事をしているときの自分」、「家族といるときの自分」、「友達といるときの自分」……などというふうに「自分」を分けていく概念です。

 このときには分人主義のことが書かれている『空白を満たしなさい』という小説が出たばかりだったので、それも読みましたが、ものすごくよかった! タイトルも好きだし、後半では涙腺が決壊したところもあるくらい、グッときたんです。それで会いたいと思ってゲストで来てもらったんです。

平野 呼んでいただいた番組は「洋楽で世界を変える」というのが毎回のコンセプトでしたよね。僕は音楽が好きだし、音楽の話をするのは楽しいだろうという意味で、気がラクな部分もあったんです。実際、大谷さんと最初に会ったときの印象は、音楽に詳しい人だなあというものでしたから。

大谷 僕が受けた平野さんの第一印象は「意外とガタイがいいんだな」というものでしたけど(笑)。

平野 それはよく言われるんです(笑)。


■ 自殺を止める! 生きることの可能性に気づかせる

大谷 今回の対談では、自殺について語る部分も増えると思うんですが、僕は、本気でみんなの自殺を止めたいんですよね。そんなことを言うと、「お前、ナニ言ってんの?」って返されることもあるんですけど。自分で死を選ぶことも一つの権利だと言う人もいるから、それを止めようとするのは野暮だってことなんですよね。でも、僕は野暮でいいと思ってるんですよ。野暮なのはわかっていながら自殺を止めたいんです!

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生きる理由を探してる人へ

大谷ノブ彦 /平野啓一郎

「自殺=悪」の決めつけが遺族を苦しめることもある。それでも自殺は「しないほうがいい」。 追いつめられていても、現状から脱出して「違うかたちで生きる」という道を提示できないか。 変えられるのは未来だけじゃない。芸人と作家が語り合う異色対...もっと読む

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コメント

wildriverpeace これは面白いです❗️ 3ヶ月前 replyretweetfavorite